究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-
音楽と本について格調低く語る
インバルのマーラー「大地の歌」
2006.12.03
-
マーラー
インバル指揮フランクフルト放送饗/マーラー「大地の歌」
「鼻ほじり論序説」という本がある。今朝の朝刊の読書欄で、漫画家の諸星大二郎が推薦していたので思い出した。確か以前にも誰かが薦めているのを見て欲しくなったのだが、まだ読んでいない。
聞くところによれば、鼻をほじるという行為を、様々な観点から解き明かした書物らしい。実生活には全く役に立たない本でありそうで好ましい。実際、諸星も「何の役にも立たない」とコメントを残しているが、おおざっぱに言ってしまうと、どんな本も実生活には役に立たないのだろう。本を読まなくても、できる仕事はたくさんあるし、本を読まなければできない仕事を探すほうが難しそうだ。役に立たない読書、これが読書の醍醐味だと思う。
「鼻ほじり論序説」
今日は、むしょうに「大地の歌」を聴きたくなった。マーラーがジンセイに対して諦念をあらわした音楽だとされている。若い頃はあまり馴染むことができなかったが、30を過ぎて、ようやくこの曲のよさの一端を感じることができるようになった。ユダヤ人であるマーラーが中国人の手による詩に対して、どのようなインスピレーションを受けたのか、この音楽を聴くだけでは理解しにくい。が、大編成であるけれども室内楽的に凝縮された管弦楽と、二人によって歌われる音楽は、普段、世俗にまみれて酒びたりのテイタラクな生活をしている私を癒してくれるものだ。
これぐらいの曲になると、あまり演奏者を選ばなくてもいい。ワルターやクレンペラー盤の歌手の素晴らしさ、ジュリーニ盤のオーケストラの気迫、バーンスタイン盤の感情の豊かさなど、それぞれいいけれど、このインバル盤の繊細さも魅力的だ。
盛りを過ぎたシュライアーは、時折きつそうであるが、ベテランらしく全体をまとめているし、アルトのヴァン・ネスは線は細いが、全体の雰囲気に溶け込んで、ひとつの楽器のようにふるまっている。
インバル指揮のオケからは、一音も漏らすまいとする必死さと細やかさを感じる。
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無題
- naoping
こんばんは。
遠い昔、インバルがN響の定期でマーラー6番?を振ったのを聴きに行ったことがあります。彼はオケが出す音は全部振らないと気がすまないみたいでした。たまには気を抜けばいいのに~と思いつつ、楽員さんが音を出したあとでもそれに合わせていっしょうけんめい指揮をしていました。ほんとに律儀な方です。
2006.12.04 Mon 20:40
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Re:naopingさん、こんばんは。
- 管理人:芳野達司
インバルの生マーラーをお聴きになりましたか。いいですね。彼の6番のCDもよく聴くのですが、細かいところにまで手が届く丁寧さを感じます。
新譜が出ると気になる演奏者の一人です。
また、髪型も素晴らしくて、いつか真似をしたいと目論んでおります。
2006.12.04 23:11
無題
- ピースうさぎ
インバルの音作りは「大地の歌」ではなかなかいい感じですね。ネスの歌、私も好きです。シュライヤーはややくたびれた感じがいいす。
トラックバック、やり方がわからないので(今更なんですが。。。)アドレスを最後にペーストしておきました。すいません。
http://blog.goo.ne.jp/prabbit/e/c8a3d52059d9813fb4d88321da4d0e45
2006.12.04 Mon 22:59
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Re:ピースうさぎさん、こんばんは。
- 管理人:芳野達司
「大地の歌」を聴きたくなって、久々にインバルのCDを聴きました。とても良かったです。録音も鮮明ですし。
その直後にワルター/VPOを聴きました。これも好きなのですが、録音のせいもあって、インバルのほうが鮮やかな印象を受けました。
この盤、あまり世評には上りませんが、いい演奏でした。
2006.12.04 23:15
無題
- bitoku
こんばんは。
マーラーはインバルのこのチクルスで初めて聴いたので個人的に思い入れがあります。
指揮者もオケこの頃のマーラーの演奏には勢いがありました。
「大地の歌」は吉田さんと同じく最近良さが分かって来ました。
聴くときは構えて聴いてしまう「深~い」音楽ですね。
2006.12.05 Tue 22:50
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Re:bitokuさん、こんばんは。
- 管理人:芳野達司
インバルという指揮者には思い入れがあって、彼のCDならなんでも聴いてみたいのです(それは今のところ実現していないのですが)。それは、彼の偏執狂なまでの演奏に対するこだわりだと思っていまして、なかには、あれ?というような演奏もありますが、それでも彼の苦闘の跡を音楽に聴くことができ、面白さを感じます。
「大地の歌」はふかーいですね。対位法を駆使した「第五」と中国の詩を題材にしたこの曲はしばしば対照的に扱われますが、どちらも味わい深いデス。
2006.12.05 23:20
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