マーラー:交響曲「大地の歌」 ショルティ指揮コンセルトヘボウ管弦楽団原田宗典と町沢静夫の「ぼくの心をなおしてください」を読む。
これは、躁うつ病に悩む作家と精神科医との対談集。
ここではさまざまな心の病気についての原因と対処法について語られているが、とくにうつ病について多くのページを割いている。
興味深かったのは、都市部にうつ病患者が多いという話。
「人間にとっての本能は、周囲の人たちと感情を交流させること」だから、人間関係が希薄な都市部では発生率が高まるという。
都市部だから人間関係が希薄かどうかはおいておくとして、周囲に対して無関心でいることがストレスの原因になるという説は、なんとなくだが、わかるような気がする。
無関心でいるというよりも、むしろ関心があるのに、コンタクトを取らない、もしくは取ることができないことがストレスとなって発生するのじゃないか、というのがぼんやりとした感覚だ。
ショルティが晩年に演奏したマーラーを聴く。
コンセルトヘボウとのマーラー録音は、61年の4番以来だから、これは31年ぶりということになる。
旧盤はいい演奏だったから、期待して聴き始めた。
ふたりの歌手は、声の質が似ているようだ。音の色合い、というか風味がそっくり。バターをたっぷりと使った洋菓子のように甘みがある。
モーザーのテノールは、出だしはやや遠慮がちなものの、その後は安定した歌を聴かせる。際立った特色は見当たらないものの、バランスのよい歌を聴かせてくれる。
リポウシェクの音色は、コクのあるオーケストラとよく溶け合っている。ことさら暗くはないし、かといってあっけらかんと明るいわけでもない。適度な陰影が、すっと沁みこんでくる。
全体を通して、オーケストラの鳴りがとてもいい。バランスがいいし、強い意欲を感じる。いままで聴いたなかでは、ジュリーニのベルリン・フィルに比肩すると思う。
ショルティのテンポをあまりいじらない直線的なやり方は、シカゴとの旧盤と同じスタイルと言えるが、オーケストラの質感はやや異なる。シカゴの「切れ味」をとるかコンセルトヘボウの「まろやかさ」をとるかは好みだろう。
どちらがいいかと言われれば、迷うところ。歌は旧盤のほうが好きかな。
マリアーナ・リポウシェク(アルト)
トーマス・モーザー(テノール)
1992年12月、アムステルダム、コンセルトヘボウでのライヴ録音。
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