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フリッチャイのボロディン「だったん人の踊り」

2006.11.28 - ボロディン
フリッチャイ

フリッチャイ指揮ベルリン・フィル/ボロディン「だったん人の踊り」

村上春樹が「グレート・ギャツビー」を翻訳/刊行したということで、一昨日から読売新聞で村上のインタビューが掲載されている。
本日は最終回だったのだが、芸術家に対する意見が、彼の独特の軽い口調で述べられていたのが興味深かった。
「天才と呼ばれる人々の個人的生活にはどんな規範や基準も適応できません。」
これは村上が几帳面で規則的な生活を送っていることに対して聞き手が問い合わせたときの答え。イメージでいうと、映画『アマデウス』の主人公のような人物が想像できる。
これは、天才に対するわりと一般的なイメージだとおもうのだが、どうしてそうなるかというと、後世のヒトが面白おかしい伝記に仕立て上げるからだろう。
さらに村上はこう言う。
「天才はどんな生活を送り、どんなひどいことをしてもべつにかまわない(もちろん芸術的な視点から言ってですが)。破滅しようが、若死にしようが関係ない。ただ素晴らしい作品を後世に残せばいいわけです。天才というのはそのために存在しているのですから。」
これも、私の天才のイメージに合うのだが、村上が言うとさらに説得力を増す。というか、どんな識者が語ってもこのような感想になるのかもしれない。天才はまさに凡人には想像つかない世界に生きているようだ。ベルリオーズが仮に愛人を撃ち殺しても、「幻想交響曲」の魅力は今でも変わらないだろう。
天才がそういった存在だとすれば、逆に社会的制約を背負っている私たち一般人のジンセイも、なかなかどうして厳しいものであるといわざるを得ないと思うのだが。
いや、制約に縛られるほうがラクなのかな?
そんなことを思う晩秋の夜なのであった。

ボロディンも天才に入るのだろうか? しかしこのヒトは化学者として生計を立てていたという素晴らしい社会的人物である。どうして、片手間で後世に残る芸術を残せるのか、不可解だ。才能ありすぎ。
このフリッチャイ盤、1952年録音のモノラルであるが、録音がすごくいい。この前に配置されているチャイコフスキーの交響曲も音がいいと思ったが、このボロディンはスゴイ。目隠しされたら絶対にステレオだと感じるだろう。フリッチャイがロシア音楽をやるときに時折見せる、感情のこもった有機的な荒れ狂い方が絶妙。




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Comment

無題 - しじみ

こんばんは。
「有機的な荒れ狂い方」ですかー。なるほど。吉田さんの言葉の使い方には本当にいつも感心してしまいます。
ボロディンの交響曲2番について書いたときに触れましたが、私はこのオペラを観ています。フィナーレのだったん人の踊りは本当に圧巻でした。音楽、合唱、バレエ。まさに「有機的な荒れ狂い」でした。オペラ自体はそんなに面白いとも思わなかったのですが、不思議ですね、だったん人の踊りだけは強烈に脳裏に焼きついています。
2006.11.28 Tue 23:19 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ちょうどいま、貴ブログにお邪魔していたところでした。

「イーゴリ公」ですよね、有名曲でありながら、公演はとてもめずらしいです。貴重な体験をされましたねー。
「だったん人」は、こうしてCDを聴くだけでも心が沸き立つのですから、舞台付きでは、さぞド迫力なのでしょう。
たまにはオペラに行きたい…。
2006.11.28 23:35
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