邱永漢の「いい仕事、見つかりましたか」を読む。
台湾で生まれ日本で育ったアジア人であり、事業を成功させて富裕層になった著者。
「会社も人減らしに熱心ですが、働くほうも一つの会社に長く勤めていたいとは思わなくなったようです」。
「いまの若い人は、何も無理して一流会社に勤めなくとも、働きたいときに働いて、適当にお金を貯めて、どこかへ旅に出たくなったらいつでも仕事が辞められる、それでいいじゃないかと考えます」。
この本が書かれたのは、2002年。私がまだ最初の会社にいた頃である。いまとなっては、上記の言い分がとてもよくわかる。
これを、先見の明というのだろう。
アファナシエフのピアノで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ30番を聴く。
ある程度予想していたが、テンポが遅い。遅ければ深みが出る。それは確かにそうかもしれない。ただ、この人の音はあまり美しくない。生で聴いたことがないのでディスクの録音でしか判断できない。一連のシューベルトの録音はDENONであった。いい演奏であったと感じたが、音は硬かった。
これは若林工房の録音。ここでも、DENONと同様の音だが聴ける。日本のホールでのライヴだから、という理由だけでこういった音なのかわからないが、硬いのである。同じベートーヴェンで言えば、ゼルキン、グールド、グルダ、ギレリスなどとは様相が異なる。なんというか、味というか、雰囲気がない。あたかも、高橋悠治が弾いたケージの録音を思わせる。これも、DENONである。ケージの作品ならば、こういう録音でもいいと思う。
HMVのレヴューの評価は高い。演奏が録音によって幅広く評価されるということを、如実に知らしめてくれるディスクだ。
2003年10月、東京、サントリー・ホールでのライヴ録音。
湖。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR