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"徒然草"、ウゴルスキ、ブラームス"シャコンヌ"

2017.12.30 - ブラームス

bizet




吉田兼好(内田樹訳)の「徒然草」を読みました。


「露霜に濡れそぼって、あちこちふらふらとさまよい歩き、親の諫め世人の誹りに心休まるときもなく、さてどうしたものかと思案しても妙案は出でず、結局は毎晩独り寝することになるのだが、目が冴えて微睡むこともできない・・・・・・というようなのが男としては味がある」。


本書は、著者が常日頃思っている事柄と、世間のゴシップとの2つに大別されますが、前者のほうが面白い。納得がいくものもあれば「?」というものもあったりして。
上記の引用のような、孤独な男を推奨するような類の話がいくつもあるのは、兼好が独り身だったからでしょう。恋やつれはしているものの、さりとて女から秋波を送られてなびくようでは軽く見られる、このあたりのさじ加減が微妙、というあたり昔も今も変わらないのだと感慨深いものがあります。








ウゴルスキのピアノで、ブラームスの左手のためのシャコンヌ(原曲:バッハ)を聴きました(1996年4月,6月、ベルリン、イエス・キリスト教会での録音)。

この曲は、右手を痛めたクララ・シューマンのために書かれたもので、左手だけで演奏できるようになっています。
シャコンヌのピアノ編曲版はブゾーニのものが有名。これはまさにヴィルトゥオーソのための曲であり、厳粛ななかにケレン味もある。
それに比べると、このブラームスのは片手なので当たり前かもしれませんが、もっと簡素。音が少ないから、ひとつひとつの音が厚く際立っています。
ウゴルスキの音は、密度が濃く重厚でありつつ、透明感を湛えています。適度な粘りが音楽に広がりを与えているようで、なかなかスケールが大きい。いいピアノです。

それにしても、なぜか世の中には「左手のための」ピアノ音楽が多いですね。










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パースのビッグムーン。












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Comment

独特の世界のシャコンヌ - yoshimi

こんにちは。

ウゴルスキはずっと昔の来日公演でもこの曲を弾いていました。吉田秀和氏が新聞に書いた演奏会評を読んだことがあります
ライブ映像も見ましたが、柔らかい音色とやや粘着的なフレージングで、ブラームスともバッハとも違った独特の世界のシャコンヌです。
スタジオ録音の方が、音がシャープでタッチの粘着感が薄く、リサイタルの演奏よりもずっとすっきりと明晰な感じがします。

左手のための曲は、左手しか使えないピアニストが依嘱したか、その人のためにと作曲家が書いた曲が多いですね。
ピアニストでは、ヴィトゲンシュタイン(協奏曲が多いです)と館野泉が多数依嘱しています。
ネッド・ローレムの《ピアノ協奏曲第4番》は右手を故障したゲイリー・グラフマンのために書かれています。
2017.12.30 Sat 15:20 URL [ Edit ]

yoshimiさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

ブゾーニのはよく聴きますが、このブラームスは初めて聴きました。シンプルななかにほのかな霊感がただよっていて、素敵な曲だと思います。
カッチェンの全集にはたしか入っていなかったので、存在も知らなかったような。。
ウゴルスキは来日公演でもやっていたのですね。お気に入りの音楽でしょうか。
左手が多いのは、手の構造上の問題もあるのでしょうね。
2017.12.31 11:42

左手の曲が多いのは - yoshimi

右手の曲が少ないのは、左手を故障するピアニストが少ない(=ニーズが少ない)ことと、両手のピアニストがあえて片手で弾く場合には、利き腕の右手で弾くよりも、利き腕でない(伴奏側の)左手で弾く方がチャレンジングだからではないでしょうか。

ほとんどの曲は、左手よりも右手の方が運動量がはるかに多く、手指を酷使します。
右手の故障が多いのは、手の構造の問題というよりは、筋肉・骨・関節・神経の疲労度の違いによるものだと思います。
フライシャー(ジストニア)、グラフマン、ベロフ、ペライアの故障も右手でしたね。
2018.01.01 Mon 00:34 URL [ Edit ]

yoshimiさん、あけましておめでとうございます。 - 管理人:芳野達司

本年もよろしくお願いいたします!

右手が故障しやすい、なるほど。また、チャレンジングという説はじつに面白いです。ありがとうございます。
そうそうたるピアニストが右手を故障したのですね。左手の曲はあるとはいえ、ショックは大きかったのだろうと推察します。復帰できてよかった。
2018.01.01 17:10

ご参考 - yoshimi

新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

新年早々ですが、どうして右手の曲が少ないのか、気になったので調べてみたら、吉松隆の論考「左手のピアノの内宇宙」がありました。ご参考にどうぞ。

ちなみにウェブで検索してみると、ピアノを弾く人でジストニアを発症したと書いている人は、右手を故障していることが多いですね。
2018.01.01 Mon 23:08 URL [ Edit ]

追伸です - yoshimi

すみません、先ほどの記事はURLが抜けていました。

吉松隆のブログ記事「左手のピアノの内宇宙」はこちらです。
http://yoshim.cocolog-nifty.com/office/2012/05/post-c7a7.html
2018.01.01 Mon 23:14 URL [ Edit ]

ありがとうございます。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。
楽しく読ませていただきました。
「鍵盤上では、右手は高音方向(右側)に伸ばすのは得意だが、低音側(左側)に行くのは不得手」という見かたがあり、左手曲が多い、と。
さらに、「それは・・・ ヴィトゲンシュタインと舘野泉がいたからなのだ。」なるほど!
考えていたよりも多くあるのですね。右手の曲も少ないけれどありますが。
ご紹介ありがとうございます。
2018.01.02 10:44
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