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"サンバ"、ゼルキン、"ヘンデル変奏曲"

2015.01.31 - ブラームス





錦糸町楽天地シネマズでエリック・トレダノ監督の「サンバ」を観る。

これは、パリで働く不法労働者のセネガル青年と鬱病の女との邂逅を描いたフランス映画。

女がシャルロット・ゲンズブールであるとは、今知った。若い時のマルタ・アルゲリッチを思わせる風貌であるが、決して美人とは言えない。ただ、アンニュイな雰囲気はある。

予告編ではコメディ映画を思わせたが、本編はわりとシリアス。フランスの日常問題、つまり移民問題をテーマにしている。

はたからみるとフランスは、アフリカやアラブの移民が自由奔放に出入りしている自由な国だと思っていたが、実情は異なる。就労ビザをとることは、容易ではない。

2時間、飽きないで観ることができたから、面白い映画だと思う。ラストはなかなか痛快だが、喉に小骨が刺さったような痛みを感じないではいられない。



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ゼルキンのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」を聴く。

この曲は難しいらしく、腕の立つピアノ弾きが立ち向かってもなかなかうまくいかない。「ゴルトベルク変奏曲」ほど人口に膾炙してはいないし、「ディアベリ変奏曲」ほどには大曲とは言われていない。
なので、それらの曲よりは、録音の数は少ないようだ。私もあまり馴染みがなかった。

この曲は、主題と25の変奏、それとフーガからなる。ブラームス28歳のときの大作である。ブラームスはピアノ・ソナタを若い頃に書きあげているので、これは驚くほど若いというわけではない。しかし、完成度・成熟度を鑑みると、3つのソナタよりも高いようにも思える。

ウィキペディアによれば「バッハの『ゴルトベルク変奏曲』、ベートーヴェンの『ディアベリ変奏曲』、ロベルト・シューマンの『交響的練習曲』と並び称される、音楽史上の変奏曲の歴史を飾る曲」とのこと。聴き手にとって、これが一番渋いのではないだろうか。

ゼルキンの技巧は確かだ。ときに、55歳前後。円熟の世代である。丁寧であり慎重であり、かつ大胆。
質実剛健。諸行無常。音が太い。

最後のフーガの威容には圧倒されないわけにいかない。若者ふうに言えば、ボスキャラの登場。ベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」、あるいは31番ソナタの終楽章、といった佇まい。音が多い。でも、くどくない。速い。でも鼓動はついてゆく。スゴイ、力である。

録音はモノラルなのかな? みずみずしくて聴きやすい。
このボックスは、質・量ともにとても満足できる。まだ、半分も聴いていないのに。


1957年5月22日、ルガーノ、テアトロ・クルザールでのライヴ録音。



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八甲田その4。












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Comment

ヘンデルバリエーション - yoshimi

こんばんは。
ゼルキンのヘンデル変奏曲は有名ですね。スタジオ録音が2種類あります。
ずいぶん以前に聴きましたが、最後のスタジオ録音はソノリティの美しさに拘った頃のゼルキンらしく、流麗で響きが綺麗だったような覚えがあります。
このライブ録音の方は、それよりも骨太で質実剛健な感じがします。

ブラームスの変奏曲では、難曲中の難曲のパガニーニ変奏曲の方が有名ですが、私はヘンデル変奏曲の方が音楽的な完成度が高くて好きなので、いろいろ聴きました。
この曲を得意としていたのは、ゼルキンのほかに、カッチェンとアラウで、複数の録音があります。
それ以外で好きなのは、切れ味鋭いアックス、叙情的でロマンティックなコヴァセヴィチです。

変奏は曲想・技法ともバリエーション豊かですし、特に重たい和音を高速で移動していく変奏では、技巧の優れ具合がよくわかります。(さすがに晩年のアラウのスタジオ録音では、そこが苦しかったです)

ブラームスは、ピアノ・ソナタを3曲書いて打ち止めですから、ソナタ形式はあまり得手ではなかったのか、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ以上のものは書けないと思ったのかもしれませんね。
2015.02.02 Mon 01:12 URL [ Edit ]

ピアノ好きでも通好みかなと - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。
ゼルキンはスタジオ録音も2種類あるのですか。著名なピアニストでもなかなか取り上げないこの曲を得意としていたのですね。
ゼルキンの録音の多くはCBSですが、音質が硬いものが多い気がします。セルとやったブラームスが代表的で、あとベートーヴェンのソナタもいくぶんとんがっているような。
こうしたライヴ録音ですと、彼がいかに細やかに、柔らかな音を奏でていたのかが推察されます。このブラームスもそうじゃないかと思います。
彼のライヴ録音は、難しい箇所は普通に難しそうに演奏するところがいいですね。手に汗を握るような緊張感があります。
カッチェンとアラウ、コヴァセヴィチをチェックしました。
2015.02.02 20:41

訂正とご参考 - yoshimi

昔書いた記事を読んでいたら、ゼルキンのスタジオ録音は1種類だけでした。(2種類あるディアベリと混同していました)

参考までに、カッチェンの音源はYoutubeにありませんでしたが、アラウのライブ録音がありました。
スタジオ録音より技巧が安定してますが、全体的に重たいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=iRwzSZcP-2Y

コヴァセヴィチは若い頃のスタジオ録音だけです。今の私としては、アラウよりもコヴァセヴィチの方が好みにあってます。
https://www.youtube.com/watch?v=niddbgY4a7o
2015.02.02 Mon 23:30 URL [ Edit ]

ご丁寧にありがとうございます。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。
このヘンデルの変奏曲にしても、ディアベリの変奏曲にしても、子供の頃はまさか楽しんで聴くとは思わなかった曲です。
ディアベリは、若林の実演奏やシフの2種の演奏でだいぶ距離は縮まりました。ブラームスはこれからといった感じです。ただ、ゼルキンで意識し始めたところはラッキーだったように思います。彼ならおそらく間違いないですから。

アラウとコヴァセヴィッチのご紹介ありがとうございます。
週末にじっくり聴いてみます。
2015.02.03 21:30
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