錦糸町楽天地シネマズでエリック・トレダノ監督の「サンバ」を観る。
これは、パリで働く不法労働者のセネガル青年と鬱病の女との邂逅を描いたフランス映画。
女がシャルロット・ゲンズブールであるとは、今知った。若い時のマルタ・アルゲリッチを思わせる風貌であるが、決して美人とは言えない。ただ、アンニュイな雰囲気はある。
予告編ではコメディ映画を思わせたが、本編はわりとシリアス。フランスの日常問題、つまり移民問題をテーマにしている。
はたからみるとフランスは、アフリカやアラブの移民が自由奔放に出入りしている自由な国だと思っていたが、実情は異なる。就労ビザをとることは、容易ではない。
2時間、飽きないで観ることができたから、面白い映画だと思う。ラストはなかなか痛快だが、喉に小骨が刺さったような痛みを感じないではいられない。
ゼルキンのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」を聴く。
この曲は難しいらしく、腕の立つピアノ弾きが立ち向かってもなかなかうまくいかない。「ゴルトベルク変奏曲」ほど人口に膾炙してはいないし、「ディアベリ変奏曲」ほどには大曲とは言われていない。
なので、それらの曲よりは、録音の数は少ないようだ。私もあまり馴染みがなかった。
この曲は、主題と25の変奏、それとフーガからなる。ブラームス28歳のときの大作である。ブラームスはピアノ・ソナタを若い頃に書きあげているので、これは驚くほど若いというわけではない。しかし、完成度・成熟度を鑑みると、3つのソナタよりも高いようにも思える。
ウィキペディアによれば「バッハの『ゴルトベルク変奏曲』、ベートーヴェンの『ディアベリ変奏曲』、ロベルト・シューマンの『交響的練習曲』と並び称される、音楽史上の変奏曲の歴史を飾る曲」とのこと。聴き手にとって、これが一番渋いのではないだろうか。
ゼルキンの技巧は確かだ。ときに、55歳前後。円熟の世代である。丁寧であり慎重であり、かつ大胆。
質実剛健。諸行無常。音が太い。
最後のフーガの威容には圧倒されないわけにいかない。若者ふうに言えば、ボスキャラの登場。ベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」、あるいは31番ソナタの終楽章、といった佇まい。音が多い。でも、くどくない。速い。でも鼓動はついてゆく。スゴイ、力である。
録音はモノラルなのかな? みずみずしくて聴きやすい。
このボックスは、質・量ともにとても満足できる。まだ、半分も聴いていないのに。
1957年5月22日、ルガーノ、テアトロ・クルザールでのライヴ録音。
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