ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団「文藝春秋1月号」を読む。「弔辞」が気になったのだ。1980年代以降に亡くなった46人に対する弔辞のかずかずが特集されている。
とくに泣けたのは、三沢光晴。徳光和夫の弔辞そのものよりも、彼が対戦相手のバックドロップに沈んだことが書かれていて、改めて思い出した。不謹慎かもしれないが、プロレスラーとしてこれ以上ない見事な幕切れだと思う。
それからジャイアンツの木村拓也。この人はグラウンドで倒れたわけで、これも見事な最後。野球人冥利に尽きる死にかたなのじゃないだろうか。原監督の弔辞は彼らしいガッツに溢れたもので、最後の「一緒に戦うぞ、拓也」あたりは意味不明だが、泣ける。
あと高橋和枝。「サザエさん」のカツオ役を長くやっていた方で、1999年に亡くなっている。弔辞を読んだのは波平を演じる永井一郎。「カツオ!親より先に行く奴があるか!」だって(涙)。
タモリが赤塚不二夫に読む弔辞の見事さは、ご存じの通り。
オーマンディのブラームス。以前から気になっていて最近やっと入手。どれも渾身の作品で、なかではこの2番、それから4番が特に優れているように思う。
オーケストラの重層的なハーモニーの濃厚さと、明るい質感とがうまいこと融合したブラームスだ。それは、1楽章の第1主題の歌わせかたに出ている。弦の響きは分厚い反面、ひとつひとつの音をスタッカート気味に鳴らせているから、軽やかな躍動感がある。調性は明るいものの、いかにもブラームスといった風情で重厚長大に鳴らせてしまうと、せっかくの青空が雲に覆われてしまう。ここを、さっぱりと刈り上げたところがいい。よく晴れた冬の朝に、柳瀬川の鉄橋から見ることができる、クッキリとそびえ立つ富士山のごとき雄大さだ(といってもわかりませんよね)。ブラームスの2番はこうでなくては。
なかでも、2楽章は歴史的名演奏といっても言い過ぎではないかもしれない。微妙なニュアンスをつけてしなやかに流れる弦楽器に、ほんのりヴィヴラートをかけたホルンが重なりあい、クラリネットやファゴットが展開してゆくところの妙味。クラシック音楽を聴くひとつの醍醐味がある。
1966年4月6日、フィラデルフィア、タウン・ホールでの録音。
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