チャイコフスキー 「くるみ割り人形」 バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場サイダコヴァ(クララ)
マッツ(ドロッセルマイヤー)
マラーホフ(王子)
クノップ(王妃)
ナチエヴァ(雪の女王)
バール(振付・演出)
昨晩は、「名曲の楽しみ」を久々に聴いた。
毎週聴きたいと思っているのだけど、この時間は呑んじゃっているのでなかなか聴くことができていない。
昨晩は早めに切り上げ、寝床で聴いた。
思えば、吉田秀和がチャイコフスキーを毎週語るなんて、昔では考えられなかったことだと思う。
どちらかといえば、彼の嫌いな作曲家ではなかったか。その彼がチャイコフスキーを毎週かけてくれるのでとても気になっているのだ。
昨日は、「くるみ割り人形」。序曲から行進曲までを流したところで、ぼやきのような解説がちょっと入って、各国の踊りまですっとばして終曲まで。
友達を相手にしゃべるような朴訥な語りが、昔と変わらず味わい深い。
アシュケナージの演奏が退屈だったわけじゃないけど、途中で力尽きて寝てしまったので、最後の「そいじゃ、また」が聞けなかったのは残念。寝るの早すぎ。
各国の踊り(ディヴェルティスマン)を、舞台つきで観るのは面白い。
というか、すさまじく楽しい。
豪華なオードブルの連発である。
食べ物でいえば、各国の焼き物、蒸し物、炒め物、揚げ物が一口ずつ、品数は豊富にテーブルに色とりどりならんでいる様だ。
酒ならば、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ワイン、老酒がところ狭しとひしめき合っている、そんな食卓。
手を変え品を変え、色とりどりの踊り手が、それぞれの国の特色を帯びた楽しい音楽に合わせて乱舞する。
ここが音楽のピークであると同時に、バレエのピークでもあることは、聴衆の喝采の盛大さでも感じることができる。
日曜日の午後4時。
翌日のことが気になって、気分が落ち込む時間帯である。
でも、この舞台を見ているあいだ、そういった憂鬱な気分を忘れることができた。
バレエのことは詳しくわからないけれど、強烈なインパクトのある舞台と音楽だった。
他の場面では、雪の精が踊るワルツも素晴らしかった。白い衣装で覆われたダンサーの幻想的な舞台は季節を超えて心に迫るものがあった。児童合唱団はいまひとつだったけれど、踊りは最高。
バレンボイムは、なんとも濃い演奏。テンポが全体にゆっくり目なのは、踊りに合わせたところもあるのだろうが、流れの嗜好はバレンボイムのものと想像する。強弱の大きな変化、テンポの細かな揺れ動き、時折みられるポルタメントは彼ならではのものだ。
特に「花のワルツ」の悠々たる流れは、今まで聴いたことがないくらい、独特の世界だ。
淡い色を使った水彩画のような衣装と舞台が繊細ですばらしかった。
1999年12月23日、ベルリンでの録音。
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