シューベルト(ベリオ)「レンダリング」 スダーン指揮 モーツァルテウム管![](http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=beethoblogshi-22&l=ur2&o=9)
「レンダリング」は、ベリオがシューベルトの交響曲ニ長調を補筆して完成させた管弦楽曲であるが、ふたりの作曲家の色が描き分けられていて、まったくユニークな味わいがある音楽だ。
19世紀前半の古典的世界と、20世紀後半の混濁した秩序の融合。
平穏な日常生活が急速にゆがんでゆくような感覚、もしくは雲ひとつない快晴の空があっという間に雲に覆われて雷が轟く風景、もしくは普段温厚な人の顔が怒りにゆがんでゆくような。
この下手な喩えは常に前者がシューベルトというわけではなくて、19世紀初頭の牧歌的シーンが実は悪夢であり、不協和音の鳴り響く現代の音のほうがむしろ日常の世界に近かったりするのかも知れない。
見ている世界がみるみるうちに変化してゆくところの自在さが、この曲の面白さである。
この音楽、シューベルトとベリオと、どちらの色が近いのか。メロディーはシューベルトのものであるいっぽう、全体のコーディネイトはベリオだ。時代は違えど、ふたりの作曲家の幸福な共同作業と思う。
これを聴いてシューベルトがどう思うか気になるところだ。気にしてもしょうがないけど。
ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団は、軽快でしなやか、あたかもライト級ボクサーのような軽やかな足取りでふたつの異なる情景を描いている。
2002年8月、ザルツブルクでのライヴ録音。
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