「君の肉体がこの人生にへこたれないのに、魂の方が先にへこたれるとは恥ずかしいことだ」。
小林研一郎指揮東京都交響楽団の演奏で、スメタナの「わが祖国」を聴く。
小林は、2002年に日本人として初めて「プラハの春」において「わが祖国」をチェコ・フィルで指揮した指揮者であり、この曲を得意としているようだ。ディスクも複数あるようで、チェコ・フィルとの演奏をはじめ、読売日響ともライヴ録音している。
この演奏は、堂にいったもの。緩急のつけかたはとても自然であり、パンチ力もなかなかだ。中庸なテンポを保ちつつ、細かい表情づけを丁寧に行っている。
東京都交響楽団は、弦がいい。とりわけ「高い城」では、ヴァイオリンがとろけるような音色を醸し出している。ピッコロは精彩があり、とても雄弁。シンバルは羽毛のように繊細。
その一方、ブラスは硬い。シュターツカペレ・ドレスデンやチェコ・フィル、あるいはボストン交響楽団やフィルハーモニア管弦楽団と比べると、あきらかに潤いに欠ける。おそらく楽器は前者たちと同じくらいかあるいは高価なものを使っていると想像する。なにが違うのだろう?
なので、後半の「ターボル」や「ブラニーク」といった金管が活躍する音楽では、少々物足りなさを感じる。技術的には精度が高いので惜しい。
小林がチェコ・フィルを振ったディスクも聴きたくなった。
2009年5月26日、東京、サントリーホールでのライヴ録音。
ブッシュファイア。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR