クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、シューマンの交響曲1番「春」を聴く(1965年10月、ロンドン、アビー・ロード第1スタジオでの録音)。
これは、クレンペラーらしい折り目正しい演奏。
テンポはどちらかと言えばゆっくり目。いつも通りヴァイオリンは対抗配置。録音の加減ももちろんあるのだろうが、副声部がスッキリと聴こえて、とても見通しがいい。
1楽章は提示部の反復あり。木管楽器がピヨピヨと小気味よくさえずる。リズム感がいいので、少々テンポが遅くてもまったくもたれない。ときにクレンペラー80歳。にしては若々しい。
2楽章は淡々としている。陽炎のように、ゆらゆらと憂愁が立ちのぼる。右から聴こえるヴァイオリンが効果的。
3楽章は中くらいのテンポ。着実に地に足を着けているように、土台が揺るがない感じ。弦のキザミが明瞭に聴こえる。また低音部も堅調、しっかり支えている。
4楽章はいくぶん遅めの速度。ここでも第2ヴァイオリンがよく聴こえる。表情は豊かではないものの、春の訪れに対する、ややシニカルな喜びがある。軽やかな木管楽器が、うららかで乾いた空気の中を飛翔する。
パースのビッグムーン。
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