ベルリン・ゾリステン/シューベルト「八重奏曲」「父親たちの星条旗」を観た。硫黄島での戦いを描いた2部作のうちのひとつだそうである。
日本との戦いでアメリカ軍が勝利を確信して、擂鉢山の山頂に星条旗を打ち立てた写真は、アメリカではかなり有名なものだそうだが、私は知らなかった。この写真をめぐってのドラマが2時間あまりに渡って展開される。
戦闘シーンはすごい迫力だった。硫黄島を取り囲む数え切れないほどの戦艦が並んだ壮観さ、地下に隠された大砲で戦車を爆撃するエクスタシー、そして手榴弾で自爆した死体のグロテスクさ。
破壊する快感と、破壊される悲惨さを同時に感じた。
イーストウッドが監督をしている以上、アメリカ万歳の映画でないことは予想できたが、仮にも日本を相手に戦っている国の視点なわけだから、もっと日本に対する憎しみが描かれるのかと思ったが、不思議にそういうことはなかった。前線にいる戦士たちにとって、戦う相手がいるというだけで、相手がどこの国であるかは関係ないわけだ。映画は終始、そういう視点から戦争を見ている。
もう一本の作品はすでに公開されているので、終わらないうちに観てみよう。
というような若干重い映画を観たあとでは、少し軽い音楽を聴きたくなった。シューベルトの八重奏曲。軽いけど、1時間を超える大作。軽いんだか重いんだか。
まあ、これを聴きたくなったのであった。
室内楽といってもこのくらいの規模になると、部分的には室内オーケストラのような響きを醸し出す。弦楽器はそれぞれ1本だから独奏すると室内楽だが、木管が加わると響きにぐっと厚みがでるのがわかる。
ベルリン・ゾリステンはベルリン・フィルを中心に編成されている。そのせいか重心の低い音楽になっている。なので、軽やかな音楽というよりは、手厚い響きの音楽といえる。
この曲にはシューベルトの美しいメロディーが、特に後半の随所にちりばめられていて、魅力に尽きない音楽だが、気を緩めていると晩年の悪魔的な顔がふとあらわれて、背筋が寒くなる。「未完成」交響曲や最後の一連のピアノソナタや歌曲に通じる恐さがここでもかすかにだけど聴こえてくるのだ。
作曲年は1924年、彼が27歳の頃。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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