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あの「カラヤン」を駆け足で辿る

2006.07.16 - 聴き比べ
※勝手に「カラヤン」の日※


カラヤンのキャリアを、独断で選んだCDでもって1分で語ってみようという暴挙。いつもテキトーだが、今日もまた…。

まずフィルハーモニア管時代まで、すっ飛ばす。 ←すでに無理がある

当時のカラヤンのやり方なのか、オケの性質なのか、軽快でノリのいい演奏が多い。なかでも好きなのはチャイコフスキーの「悲愴」。第3楽章は、ライブ録音なみの臨場感とともに大きなミスがあって微笑ましいが、全体的には熱くてイキイキとした流れが素晴らしく、カラヤンの「悲愴」ではこのPOとのものを第一に推したい。

次は、ベルリン・フィル時代。音楽監督就任後から70年代半ばまでを、ひとつの区切りとしてしまおう。
彼はこの時代に、もっとも脂ぎった演奏を繰り広げていた感じがする。
私はとりあえず冷奴でビールを飲むのが好きだが、カラヤンとベルリン・フィルとのコンビをつまみにたとえればスキヤキになるだろうか。それも、ちょっとタレが甘めの。
毎日食べるのは、ちょっともたれるけれども、ときどき、いやたまに、むしょうに食べたくなるコッテリ味。
残された録音はもう膨大にあって、何を選んだっていいのだが、特にR・シュトラウスなんかは、霜降り牛肉のオンパレードで、豪華極まりない。
二日酔いの朝にはとても聴けない。

これはウイーン饗を振ったものだが、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」はやはり聴きのがせない。リヒテルとの競演だが、正面からがっぷリ四つに組んだ横綱相撲であるし、なにしろウイーン饗の鳴りっぷりがすごい。目隠しで聴いたら、誰もがベルリン・フィルだと思うだろう。


カラヤン/リヒテル

カラヤンとリヒテル/チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」


70年代後半くらいから、DGの録音がやや固めになってきたこともあって、少し筋肉質になってきたような気がする。特に、ティンパニの音質が硬くなったせいで、角が増したのではないだろうか。
その頃の録音では、チャイコフスキーの第四をある時期にとてもよく聴いた。

カラヤン チャイコフスキー

カラヤン/BPO チャイコフスキー後期交響曲集


この時期にはまた、EMIとのオペラ・シリーズがあった。いまから思うとなかなかに豪華な歌手陣をそろえていて、毎年のようにレコード・アカデミー賞を受賞していたが、私はその中で「サロメ」だけを聴いた。確かベーレンスのメジャー・デビュー盤だったと思う(違ったかな?)。
その歌唱は素晴らしいが、どちらかと言えば、ここでの主役はウイーン・フィルだ。


カラヤン「サロメ」

カラヤン/R・シュトラウス「サロメ」


80年代にはいると、DGの録音は硬質化してゆく。特にデジタル初期の「二重協奏曲」や「惑星」などは、潤いのないカサカサの演奏でガッカリしたものだ。今のリマスター盤では改良されているのかも知れない。
このあたりで、CDがボチボチ市場に登場してくる。CDに収録される時間は、カラヤンが「ベートーヴェンの第九が入るように」というような発言で決まったというが、当時CDで出ていたベーム(VPO)の「第九」は2枚組だった。確かにベームのほうが遅い演奏だが…。彼の発言の意図は「第九」ではなく、「わしの第九」だったのだろうな。

彼は晩年に、ザビーネ・マイヤーの事件をきっかけにベルリン・フィルとの仲が悪くなったが、ウイーン・フィルとの演奏機会が増えたため、結果として、録音のペースは落ちなかった。晩年の演奏では、ブルックナー第八が素晴らしい。
当地のちょっと甘めな白ワインよりは、カベルネ系のこってりとした赤を飲みつつ、生でこんな音楽を聴けたら至福だろうな。


カラヤン/ブルックナー


カラヤン/ブルックナー「交響曲第8番」



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Comment

無題 - miwaplan

こんにちは。ご参加、ありがとうございました。
ホントに駆け足ではありましたが、時代ごとのツボをきちんと押さえてあって、カラヤンの特徴の変遷がわかりますね。

どうしても晩年のイメージが強い指揮者ですので、若い頃の演奏、特にフィルハーモニア時代の音楽作りを聴くと、また新鮮な驚きがあります。

8月1日は、「ドビュッシー」を予定しておりますので、よろしかったら、またご参加下さいね。

では、たま!(TBさせていただきます)
2006.07.16 Sun 21:31 URL [ Edit ]

無題 - 吉田

miwaplanさん、こんばんは。
TBをありがとうございます。
PO時代の演奏は、もっとキチンと聴くべきかなーと思いつつ実現できていません。なにかステキな音楽が隠れているのを掘り出してみたい気がします。
2006.07.16 Sun 21:46 URL [ Edit ]

無題 - しじみ

カラヤン&ベルリン・フィルはタレ甘めのスキヤキですかー!いや~なるほど。
私はクラシック初心者の頃はカラヤンならハズレはないだろうとカラヤンのCDばかり選んでいましたが、抑揚のつけ方が何だか大げさで、いつしか離れていきましたが、例えば第九とかヴェルディのレクイエムとかロストロポーヴィチとのドヴォコンとか、確かにたまにすごく聴きたくなりますね。
スキヤキかあ。言い得て妙です。なるほど~。
2006.07.16 Sun 21:55 URL [ Edit ]

無題 - 吉田

しじみさん、こんばんは。
ス・キ・ヤ・キですネー。ひとくちめは最高! けれど食べているうちに、だんだん胃がムカついてくるというパターン。カロリー高めの料理法なのですが、演奏は皆上等だと思います。スキヤキに徹していますからネ。こうした迷いのない姿勢には畏敬すら感じます。
2006.07.16 Sun 22:07 URL [ Edit ]

無題 - ダンベルドア

こんばんは
なるほど、こうやって時代を追って整理されると良くわかりますね。
ここにはありませんでしたが、私はLP時代60年代のVPOと入れたデッカ盤を結構聞いていました。

カラヤンをすき焼きにたとえたのは傑作ですね。
2006.07.17 Mon 00:34 URL [ Edit ]

無題 - garjyu

毎度ご参加ありがとうございます。
カラヤンについては、書きたい“ネタ”は一杯あるのですがね。好悪を超えた、何せ『帝王』ですからね。
色々な意味で、指揮者という職業において、彼を超える人も、彼に肉薄出来る人も、もうこの世にはいないんですよね。

garjyu
2006.07.17 Mon 01:13 URL [ Edit ]

無題 - stbh

吉田さん、こんにちは。カラヤンの時代ごとの特徴をよく捉えてあって、こうして整理していただくとわかりやすいです。個人的には、70年前後の録音にもっとも充実を感じます。
カラヤンはもともと歌劇場たたき上げの人ですから、オペラはみんな面白いです(大甘?)。ベーレンス、バルツァ、フレーニなど、彼が取り上げて有名になった歌手も多いですよね。
2006.07.17 Mon 09:18 URL [ Edit ]

無題 - 吉田

ダンベルドアさん、こんにちは。
仰る通り、重要な60年代のデッカ盤が抜けておりました(汗。
ブラ1、3とか「惑星」、三大バレエなど、どれかは入れたかったです。
2006.07.17 Mon 10:26 URL [ Edit ]

無題 - 吉田

garjyuさん、こんにちは。
健在の頃は、新譜が出るたびに「レコ芸」の批評欄を覗いていましたが、「推薦」確率は、まさに長島現役時代のジャイアンツなみだったような気がします。「帝王」たる所以ですね。
2006.07.17 Mon 10:32 URL [ Edit ]

無題 - 吉田

stbhさん、こんにちは。
時代ごとに追っていくつもりでしたが、重要な部分をポロポロ落としてしまいました。新進の歌手を発掘する才能も見逃せませんね。今まではオペラをあまり聴いていないのですが、今後は「ドン・カルロ」や「ボエーム」にも挑戦したいところです。
2006.07.17 Mon 10:39 URL [ Edit ]
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