シューマンは、ライプツィヒ大学に入学したばかりの頃に、ハイネを訪ねたことがある。
ハイネは、この無名の若者を親切にもてなしたが、いつも女に囲まれて駄洒落ばかりとばしている彼に、シューマンは失望したという。
女性に囲まれれば、駄洒落のひとつやふたつ飛ばすのは当たり前だ。
シューマンはいかにも生真面目な青年である。
でも十数年後、シューマン自身が愛の苦しみを味わってみると、ハイネの隠れた苦渋をようやく理解したということである。
彼が駄洒落を飛ばすところは想像できないが。
シュトュッツマン/シューマン「詩人の恋」他女が歌うオトコの失恋歌。
「詩人の恋」は時には女性歌手によって歌われているようだが、私はこのナタリー・シュトュッツマンで初めて聴いた。
テンポは全体的に速めでサクサク進んでゆく。かなり緩急を織り交ぜているが、とても自然に聴こえる。声は澄みきっていて美しい。青年の恋の苦しみを繊細に、生き生きと訴えかけてくる。
女が歌うことによる違和感はない。
むしろ、「詩人の恋」の演奏の中でも、出色の歌いっぷりである。
ひとつ注目すべき箇所がある。
シュトュッツマンはコントラルトだが、7曲目の「恨みはしない」の終結の部分(「die dir Herzens friBt」)を、1オクターヴ低く歌っていると思われるのである。
この部分、激情を抑えきった歌唱であり、かえって失恋の憤怒を醸し出していると感じられる。
安定したピアノを聴かせるカトリーヌ・コラールは、惜しくも94年に早世した。
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