新国立劇場バレエ団の「眠れる森の美女」を観る。
チャイコフスキーの音楽は勝手知ったるもので、もともとはこれを聴きに行ったつもりだったが、バレエもとても面白かった。
どうこう言える知識はないからかわからないが、全体的にとてもよかった。
最初に幕が開いたときの、なんともいえない豪華さ、夢心地に背筋がふるえた。ああ、おとぎの世界が始まる。
オーロラ姫はステキだったし、王子もいい踊りを見せてくれた。
オーロラ姫が生まれたときの、湧き立つ雰囲気。なんとも華やかで幸福なひととき。みんなで踊り明かすが、やがて悪の妖精カラボスが現れ、暗雲が立ち込める。が、それでも音楽は生き生きと。カラボスは、あたかもタイム・ボカンシリーズのドロンジョのようで、色っぽくてステキな悪女。やはり敵役は魅力がないといけない。
ストーリーに則った1,2幕を経て、3幕は個人技の披露宴。わずか数分のなかに、踊りの魅力を詰め込んで魅せる。専門的なことは皆目わからないものの、誰もが高いレベルで競っていることは感じられた。
それにしてもやはり、全体を支配していたのは、チャイコフスキーの音楽である。2時間強の間、まったく飽きさせない。メロディーのよさもさることながら、オーケストレーションの見事さは、生で聴くとより一層実感できる。
サザーランドの指揮は、全体的に中庸なテンポで進める。場面によっては、踊り手に合わせてかなり遅い設定にする。このあたりは、バレエ公演では当たり前のことなのかもしれない。
東フィルは万全の出来。この曲においてはアンサンブルに加えて、ソロも高い技量を要求されているが、オーボエを始め、クラリネット、フルート、ピッコロ、ヴァイオリン、チェロといったところは安定したテクニックに加えて情感をも豊かに伝えていた。また、小太鼓の切れのよさは特筆に値する。打鍵された音がひとつひとつ粒だって聴こえるのだ。
このオーケストラは、昔から弦楽器がいい。濃厚なクリームのようなコクのある音を出す。この公演においても、それは惜しみなく発揮してくれた。冒頭のアタックから痺れた。それは、ずいぶん昔に初めて聴いた外国のオーケストラを思わせた。
バレエがこんなに素晴らしいとは。
こういうものをたまに観られるのであれば、日々の虚しい仕事も乗り切れるというものだ。
オーロラ姫:瀬島五月
デジレ王子:奥村康祐
リラの精:寺田亜沙子
カラボス:本島美和
フロリナ王女:小野絢子
青い鳥:菅野英男
その他、大勢の踊り手
東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:ギャヴィン・サザーランド
2014年11月15日、新国立劇場にて。
おでんとツイッター始めました!怪しい雲。
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