二期会のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を観る。
ヘスス・ロペス=コボス指揮読売日本交響楽団、二期会合唱団・他の演奏(2016年9月17日、東京文化会館にて)。
全体を通じて、レベルの高い演奏。背筋が痺れるシーンが多かった。
歌手はイゾルデとブランゲーネが良かった。
イゾルデの池田香織は特筆したい。
堂々とした立ち居振る舞い、そしてオーケストラに負けない恰幅のある声量。
澄み切った声は適度な重量を持ち、淡い妖艶さを湛えながら、芳香を纏わせて劇場の隅々まで響き渡った。世界にひけをとらない名歌唱と言える。
トリスタンもかなりのもの。3幕の始まりで不調がアナウンスされたが、なんのなんの、最後まで情感豊かに歌いきった、
1幕最後の合唱は今ひとつ。舞台裏からの演奏だったのでパンチ力に欠けた。
読響も良かった。2幕冒頭のホルンの見事な吹きぶり、3幕の味わい深いコーラングレをはじめ、隙がない。弦楽合奏に僅かな瑕疵があったが、それは全体を通しては問題にならない。
コボスの指揮は、各パートをバランスよく鳴らせて、立体感を際立たせていた。テンポは中庸。ことさらエロスを強調したものではなく、さっぱりとした味わい。完璧に近い距離でオーケストラを掌握していた。なんの不足があるだろう?
演出は、正方形の舞台に小舟を乗せたシンプルなもの。照明の効果が良く出ていたし、音楽を邪魔しない、と云う意味でも良かったと思う。
イゾルデ:池田香織
トリスタン:福井 敬
マルケ王:小鉄和広
クルヴェナール:友清 崇
メロート:村上公太
ブランゲーネ:山下牧子
牧童:秋山 徹
舵取り:小林由樹
若い水夫の声:菅野 敦
指揮:ヘスス・ロペス=コボス
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
演出:ヴィリー・デッカー
屋根の上のパーティ。
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