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モントゥーのラヴェル「ラ・ヴァルス」

2007.03.05 - ラヴェル

モントゥー

ラヴェル管弦楽曲集 / モントゥー指揮ロンドン交響楽団


都心の会社に勤務していると、会社の様々な雑事よりもむしろ、通勤する苦難のほうがつらいと思うことがある。激しく混んでいる通勤電車に乗っていると足は踏まれるわ、どつかれるわ、めくった新聞が顔に当たるわと、およそろくな事がない。それはなにも電車の中だけではない。
電車の中だけではなく、ホームで並んでいても割り込む奴はいるわ、改札口で立ち止まるヒトはいるわで、都会の生活は実に楽でない。そういうことが重なって気分も塞ぎがちになってくる。
で、そういうときに限って、いいこともあるのですね。
先日、鞄の取っ手が壊れた。肩掛けのものではなく手提げなのだが、時折ノートPCを入れたりするのでそれが負担になっているに違いないのだが、取っ手のねじが切れて持つことができなくなったのである。近所に鍵屋があって、そこは靴や鞄の修理も受けているのだがそこに持っていって相談したところ、かわりのねじはないけれども何とかしましょうということで悪戦苦闘した挙句に接着剤で留めてもらい、完成したものを手に持ってみると案外に具合が良かった。それで会計をお願いすると、「いや、これはいいよ」と無償で修理をしてくれた。なんだかんだと20分くらい手間をかけさせてしまったのに悪いと思いつつ甘えることにした。大手スーパーのわきにコバンザメのようにひっそりと構えている店であるが、商売抜きの人情を感じないわけにはいきませんでしたね。

そもそも商売というものは第一に自分の生活を成り立たせるための手段であるのだが、それ以前に「楽しいから」という要素があればそれは理想なのだと思う。無償で直してくれたオジサンももちろん利害関係抜きだけではやってはいられないだろうけれども、まず第一に自分が楽しめてなおかつ客の役に立つことを目指しているという姿勢を感じた。私はそれにひとときの幸福感を感じたし、彼もそれが幸福なのじゃないかと思ったのだ。世の中にはこういうヒトが少なからずいるようだ。
ジンセイは、ホントにろくでもないことばかりだけれども、こういうことがあると少しホッする。ちょっとは元気が出てくるようだ。


「ラ・ヴァルス」。フランス語で「ワルツ」の意味であるが、つまり「ワルツ」なのですね、題名が。
なんとも簡潔にして簡単。J・シュトラウスだったら、なにがなんだかわからなくなるところである。
ウィンナ・ワルツとは違う雰囲気を持つが、どことなく世紀末的な印象を受ける。もともとは舞台向けに書かれた音楽だが、ドロドロとした人間の奥底の心を垣間見るような情念が渦巻いているように聴こえる。
モントゥーは録音当時、80代の後半に差し掛かっていたが、奏でる音楽は実に元気で楽器もよく鳴っている。些細な部分にトロッとした色気を感じることができる。パリの場末の居酒屋に思いを馳せながらトリス・ウィスキーでもやりましょう。
60年代前半のフィリップス録音、これは掛け値なしにすばらしい。大管弦楽曲をおおづかみに捉えていてバランスが良い。不満なし。
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