錦糸町楽天地シネマズで吉田大八監督の「紙の月」を観る。
これは、既婚の女性行員が大学生の男と知り合いになり、銀行の金を横領しながら関係を続けるという、角田光代原作の映画。
宮沢りえの痛々しい姿がいい。大学生とのベッドシーンが多くあるが、観ているこっちが身を切られるような痛さを感じる。彼女は、映画の始まりと終わりとで表情が全然違う。時間が濃密なのだ。
銀行員が働く姿がまたいい。軽薄で計算高い大島優子、貫禄がありすぎの小林聡美が素晴らしいほか、支店長や次長ではない一般の男性行員のなにげないしぐさが、なんだかとてもリアルである。
女性行員の制服がお洒落。
マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団・合唱団の演奏で、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」全曲を聴く。
この曲、あまり言われていないかもしれないが、いささか暴力的な音楽である。部分的には、ストラヴィンスキーの「春の祭典」を予告するようなところがある。全体的にはおとなしめの場面が多いものの、ときに沸騰するような破壊力をみせる。合唱には歌詞がない。ゆえにひとつの楽器であり、そのパワーはパイプ・オルガンに匹敵するか、それを上回るだろう。ここぞというときの追い込みが凄い。
この曲の全曲をフランスのオーケストラが弾いたのは、クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団のものしか聴いたことがない。あれはいかにも、おフランス的な香水の香りがむせるような、そしてダイナミックはやや控えめな演奏だった。それはそれで悪くはない。
このマゼール盤は、筋肉質で小回りの利いた演奏であり、国籍は不明ながら爆発力のあるものに仕上がっている。アンサンブルに隙はない。そして、個々の奏者の技量は高い。テクニカルな点において、これ以上を望むものはない。いろどりは濃いブルー。なので手触りは冷ややか。マゼール/クリーヴランドの特色がよくあわられている。
ブーレーズが言うところの完璧への情熱、とは、この演奏のようなものを指すのではないか。
1974年7月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。
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