モーツァルト ホルン協奏曲集 ゲルト・ザイフェルト(Hr) カラヤン指揮ベルリン・フィル福田和也の「大作家"ろくでなし"列伝」は、古今東西の作家24人の代表作と人柄の一端を評した読み物。
なかでも特に、バルザックの項が印象的。「谷間の百合」から、女性の扱い方についての孫引き。
「こうした人生の春も、またたくまにすぎてしまうのです。ですからよく心して、この時期を充分活用するようになさいませ。そのためにはなんと言っても、ちからのあるご婦人たちとしたしくおつきあいをなさるのがいちばんです」
「信心にこりかたまってでもいないかぎり、齢とったご婦人たちには、ひとのうしろだてになることがこの世での恋のしおさめなのです」
今となってはありがちな話であるが、当時は新しかったらしい。この処世術通りに振る舞った主人公は大成功を収めるが、のちに苦いしっぺ返しを受ける。
モーツァルトのホルン協奏曲に、苦みは求めない。甘くていいじゃないか。
ザイフェルトとカラヤンによるモーツァルトは、想像通り厚みのたっぷりとした演奏。
このCDに収録されているホルン協奏曲集は、2番から4番はいずれも急-緩-急で構成されているが、1番だけは急-急となっていて、楽章のつながりが希薄だ。別の曲を繋げ合わせたような感じで、まとまりはよくない。
といいつつ、このCDでは1番の演奏が最も面白い。
こってりとしたホルンと、これまた重厚なオーケストラがバランスよくかみ合っていて、ボリューム感がある。ヴァイオリンをポルタメントで弾かせているところがあったりして、ちょっとした洒落もきいている。
1968年8月、サンモリッツ、サル・ヴィクトリアでの録音。
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