ブダペスト弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲10番「ハープ」を聴きました(1960年5月、ニューヨークでの録音)。
ブダペストによる新しいほうのベートーヴェン全集、1番からゆるゆると聴き進め、「ハープ」まできました。
いわゆる中期の弦楽四重奏曲のなかでは「ラズモフスキー2番」と並んでこの10番を好んでいます。
前に作られた3つのラズモフスキーに比べると小ぶりですが、なんともいえない朗らかさとウィットに富んだ音楽だと感じます。
どの楽章も素晴らしいですが、1楽章のアレグロが昔から好き。第1ヴァイオリンが高音から急降下するポルタメントの味がたまらなくよくて、ここだけを何度も繰り返し聴きたいくらい。
ブダペストの演奏は基本的に鋭角的なフォルムを築きますが、ほんのりとした木の温もりがふっと顔を覗かせるところがいい。
くだんのポルタメントは鋭く、バシッと決まっています。
でも、この演奏でもっとも気に入ったのは、快速が気持ちのいい3楽章を抑えて、2楽章アダージョ・マ・ノン・トロッポかな。深い哀感が、硬質な響きでもって毅然と奏されており、格調の高さを感じさせます。
わが人生も、このように振る舞えたらいいなと、思わざるを得ません。
ヨーゼフ・ロイスマン(Vn)
アレクサンダー・シュナイダー(Vn)
ボリス・クロイト(Va)
ミーシャ・シュナイダー(Vc)
PR