ゼルキン/ベートーヴェン ピアノソナタ第29番
家のテレビの調子がおかしい。
7,8年前に買ったものだが、観ているときにいきなりプチッと電源が切れて、1秒後にすぐまた画面が現れる、という状態が断続的に続いて、やがて忘れた頃に調子がよくなるのである。
通常の番組であれば、そのままやり過ごしてしまうのだが、スポーツなどどうしても切れてほしくない番組を観ている最中にこれが続いたときは、テレビの横っぱらを平手で殴りつけると、おとなしくなる。
どういう原理かわからないが、叩くだけで一時直るというのは、昔のテレビなどではよく聞く話であるが、今の家電製品でもそういうことはあるのだなあと、なぜか深く考えずに普通に納得してしまう。
今といっても、ずいぶん前のものだからこういうことが可能なのか。
ゼルキンのベートーヴェン、これは1969年から1970年にかけての録音。ささくれ立った手で音符を抉り取るような無骨なピアノであるが、全曲を通して予断を許さぬ緊張感が張り詰めていて、43分間があっという間に過ぎ去ってしまう。
これを聴いているひとときの充実感は、ほかではなかなか味わうことはできない。
名を馳せてからも、毎日地道なスケール練習を欠かさなかったというゼルキンの確かなテクニックは、冒頭の激しいアタックから終楽章のめくるめくフーガまで、曖昧さが微塵もない。同曲の中でも最高の演奏だと思う。
ぼんやりテレビを観ている場合ではないかナ。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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>ゼルキンは変な先入観もあって聴いたこと無いのですが、”同曲の中でも最高の演奏だと思う。”とまで書かれては「ハンマークラヴィーア」フェチ(?)の私としては気になります。
>CDを買って見ようかなと思っています。
>”これを聴いているひとときの充実感は、ほかではなかなか味わうことはできない。”とは我が意を得たりです。良い演奏の「ハンマークラヴィーア」を聴いているときは私も全くそう思います。人類の至宝のような偉大な作品です。
>
ハンマークラヴィーアのCDを全部聴いているわけではありませんが、お気に入りはこのゼルキンとグルダのアマデオ盤です。
一筋縄ではいかぬ険しい音楽ですが、仰るとおり「人類の至宝のような偉大な作品」であります。