ベルリオーズ「幻想交響曲」他 クリュイタンス指揮パリ音楽院管江上剛の「失格社員」を読む。
サラリーマンが主役の10編の短編からなっている。ストーリーが奇抜でまったく退屈しない。
自分は絶対にこんなことはないなというくらい現実離れしているわりには、妙に生々しさがあるところが、好評判に一役買っているのだろう。
著者による「あとがき」が、11編めの小説仕立てになっているのが面白い。彼の実際のサラリーマン時代のエピソードであるらしいが、小説に劣らぬくらいドラマチックだ。
クリュイタンスとパリ音楽院管の「幻想」。
これはLPで発売当初に、FMでやっていたのを聴いたことがあって、それが長らく忘れられなかったが、このたび廉価で再登場したので、じつに久々に聴きかえしてみた。
軽やかで匂いたつような芳香を放ちながら軽やかに進んでゆく。
最終楽章を聴くまでは、まあフランスのオケの「幻想」だなあと思うくらいで、さほどインパクトのある演奏ではない。
それは、5楽章があまりにも際立って激しいからそう感じるのだろう。
「怒りの日」をチューバで奏するあたりから、なんだかキナくさい雰囲気が漂ってくる。
鐘の音程が、全然合っていない。ズッコケそうになるが、あまりにも堂々としているため、自分が間違っているのではないかと錯覚しそうになる。
怪しい雰囲気はますます濃厚になってゆき、どんどん加速を増して白熱し、最後は大爆発。
ミュンシュの数々の「幻想」が霞むほどだ。
クリュイタンスのライヴの激しさを思い知らされるCDである。
それにしても、今は亡きパリ音楽院管はいい。
ほのかにヴィヴラートのかかったトランペット、激しいヴィヴラートを放つホルン、毅然とした佇まいのオーボエ、ひんやりとした艶のあるコーラングレ、キメの細かいシンバル、すばらしい。
1964年5月、東京での録音。
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