セラフィン指揮ローマ聖チェチリア管/プッチーニ「ボエーム」 テバルディ(ミミ)、ベルゴンツィ(ロドルフォ)、バスティアニーニ(マルチェッロ)他
Niklaus Vogelさんとしじみさんが、今月の企画としてオペラの記事を書いてらっしゃるので、私も乗らせてもらい、週末を利用してオペラについて書いてみようかと思う。我が家のオペラ・ライブラリーは貧弱にして弱小なので、すぐにネタは尽きるだろう。1ヶ月あれば充分かもしれない。
私がオペラをあまり聴かない理由のひとつに、長いということがある。通常CDや公演で聴くことのできるオペラは、私の知る限りだと、最低でも1時間前後以上かかるものがほとんどだと思う。原作が長大ではなくても、それをオペラ化すると長くなるようだ。例えばショスタコーヴィチの「鼻」。ゴーゴリの原作は中篇に属するものであるにも関わらず、オペラは2時間近くの長さになっている。マスネの「ウェルテル」もそうである。文庫本で100ページ前後のものは、だいたい2時間くらいが目安になるだろうか。そうなると、割合でいえば、いわゆる掌編小説といわれる超短編の作品であれば、サザエさん1話分くらいの短いオペラの作成が可能になるということだ。掌編小説も世界を見渡せば星のようにあるだろう。それを元に台本を書いてオペラを作っちゃえばいいのだ。安易かな。そんなニーズはオペラハウスにはないのだろうな。
短いと何が不都合なのかというと、推測するに音楽の形式に関わるというよりも、公演の演目として上演する際に制約があるからだろう。例えば1曲のオペラが10分のものだとすると、その演目だけでは足りないから他の演目と抱き合わせになるだろう。最低5,6本は演る事になるか。
そうなると、いろいろ不具合が予想される。舞台装置や衣装を演目分用意する必要があるとか、配役を揃えるのが大変だとか、幕間だらけになっちゃうとか。
でも、それくらいのサイズのオペラをさっと聴いて出勤、もしくは就寝というのも悪くないのじゃないかと思う。もう望むべくもないが、プッチーニの短編オペラ、なんてステキではないか。
さて、セラフィンの「ボエーム」。定番中の定番であって照れくさいが、今回改めて聴いてみると甘いメロディーの洪水でまいった。意外だったのは(この世界では常識かもわからないが)、プッチーニのオーケストレーションの見事さである。彩りが良く歌にしんみりと溶け合う音でもある。
セラフィンのコントロールは、どこを叩いても揺るがない恰幅のよさがある。
そして、なんといってもテバルディの歌唱がいい。キリリとしまっていてほどよく甘くて可憐な声。最後にこのヒトが死んじゃうのだから、そりゃ皆泣くね。
ベルゴンツィは、繊細で弱々しい人物を描いて余すところないが、この人も声そのものがいい。テバルディと絶妙に合っているのである。無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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