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フルニエとマルティノンのブルッフ「コル・ニドライ」

2008.04.13 - ブルッフ


Bruch

ブルッフ「コル・ニドライ」 フルニエ(Vc) マルティノン指揮ラムルー管


今東光の「毒舌 身の上相談」を読む。
30年近く前に週刊プレイボーイに連載されたものを1冊にまとめたもの。
質問者に「大馬鹿野郎」の連発だ。乱暴よりも小気味よさを感じるのは回答者の人徳だろう。
悩みはいろいろだ。
「中年の人妻だが、初恋の男と浮気したい」
「豚とSEXしてしまった」
「彼女の貯金までバクチに」
結局のところ、悩みは自分で解決するしかないわけだ。質問をするヒトは、自分ではうすうす回答を決めているのだけど、他人に後押しされたくて相談するのである。
私もなにか質問して、和尚にばか者扱いされてみたかった。


ブルッフの「コル・ニドライ」を聴く。
牧歌的味わいのある小品を、フランスのソリストが軽やかにさっぱりと奏する。
少々痩せ気味な弦楽器と、闊達で明快な木管楽器との対比が面白い。フランスのオーケストラのひとつの特徴だろう。まるで平均台の上を歩いているかのような、地に足のつかない軽やかさに独特の品がある。
ことに、曲の半分を過ぎたあたりでポロンと鳴らされるハープの登場直後の木管のハーモニーの清々しさといったら。それにフルニエのチェロがからんできて絶妙な掛け合いになる。
触れれば破れてしまいそうな精妙さであり、天空を舞うような質量の軽さがある。
とはいえ、主役は終始一貫してフルニエであり、実に堂々とした風格たっぷりの主演ぶり。
ピーンとした張りのある、深いコクのある音は、芳醇なブランデーの味わい。

1960年5月、パリでの録音。
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