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グリュミオーとロザンタールのサン・サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」

2010.11.28 - サン=サーンス
   
sa

アルチュール・グリュミオー(Vn) マニュエル・ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団


芥川龍之介の「疑惑」を読む。
これは、作家の宿に訪ねてきた男の身の上話。
濃尾地震で自宅が崩壊する。その下敷きになった妻にじわじわと火の手が迫りくる。生きながら火あぶりになる苦痛を想像するに耐えられず、男は手に取った瓦を妻の頭に打ちおろす。
その後の後悔と慙愧に塗られた人生を、淡々と語る。その語り口は、まるで他人事であるかのようで、それが怖さを一層深いものにしているように思う。


オーストラリア・エロクアンスのおかげで、今まであまりよく知らなかった演奏家を聴く機会ができた。アンセルメやベイヌムやフィストラーリといった指揮者を聴くことができたし、ヴァイオリニストではグリュミオーの存在は無視できない。
この人のヴァイオリンは、アクが少ないので、どんな曲でも安心して身を任せることができる。音は澄んでいて美しいし、技巧のレベルも高いし、なんといっても品がいい。戦後になってクララ・ハスキルに認められて知名度があがったとのことで、彼女とのベートーヴェンはノーブルな味わいがあっていいものだ。モーツァルトはもっと世評が高いが、こちらは未聴なのでこれからの楽しみ。
このサン・サーンスは、張りのある音色を惜しみなく振りまいた美演。おいしいメロディーがめくるめく繰り広がる面白さはサン・サーンスを聴くひとつの醍醐味。この小気味よいヴァイオリンと色彩豊かなオーケストラであれば不足なし。
しかしこの録音、半世紀近く前とはとうてい思えないほどクリアである。

1963年12月、パリでの録音。
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