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若杉の武満「ヴィジョンズ」

2008.05.31 - 武満

takemitsu

武満徹 管弦楽曲集 若杉指揮東京都交響楽団


マイケル・ラドフォード監督の「ヴェニスの商人」を観る。
意外にも、これが「ヴェニスの商人」の初映画化だという。映画のストーリーは、原作にほぼ忠実。
当時のヴェニスを再現した映像は、重厚で色彩感あふれるもの。
見どころは、リン・コリンズが演じるポーシャの男装。威厳はなくて、ひたすら可愛らしくて微笑ましい。
これをみてホンモノの法律家と信じるのは、チトつらいかもしれないが、可愛ければいいか。
アル・パチーノのシャイロックは、抑えに抑えた演技。最後の心の叫びは、もっと派手に演出してもよかったのじゃないかと思う。シャイロックには、もっと暴れてほしかった。


武満の「ヴィジョンス」を聴く。
武満がシカゴに滞在していた頃、豪雪で空港が閉鎖になっったらしい。
余儀なく足止めされたときに、美術館に通っていたという。その美術館で感銘を受けたのが、ルドンの作品。
そのあと、シカゴ交響楽団から作曲の委嘱があって、「是非、ルドンの絵画に因んだ作品を書きたい」と思ったことが、この作品の生まれた経緯であるとのことである。
「ヴィジョンズ」は、「神秘」と「閉じた眼」の2曲からなる。それぞれ、ルドンの晩年の作品から発想されている。
1曲目の「神秘」は、全編が「トゥーランガリラ」にとてもよく似ている。響きの醸し出す空気もさることながら、主旋律については、ほとんど同じなのじゃないか。
絶対に「トゥーランガリラ」に影響を受けているに違いない。
響きは、こちらのほうがより先鋭的ではある。
「閉じた眼」は、ふくらみがあって静かな音楽。部分的に、沸騰するような劇的なシーンがある。
武満の音楽は、オーケストレーションの色使いが独特だ。贅沢に楽器を使っていて、多彩な色があるけれども、感触は墨絵のように質素なのだ。


1991年、東京での録音。
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