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カラス・イン・シネマ
今年の初めに「トスカ」を聴いて以来、カラスが気になる。
彼女との最初の出会いはNHKの追悼番組だから、ずいぶん昔にさかのぼる。その頃聴いていたのはオーケストラ1本であり、歌にはあまり興味がなかったが、マスコミがあまりにも騒いでいたのでテレビをつけてみたわけ。主に日本での来日公演の映像だったような気がする。なかでも「カルメン」の『ハバネラ』が印象的で、オペラにもこんなにいい曲があるものだと軽く思ったものだ。
それから30年。「トスカ」を聴くまで、たぶん聴くことがなかったのじゃないかと思う。レコード雑誌を読むとよくこの曲のベスト盤はなにか? なんて企画があって、「トスカ」や「ノルマ」では毎回カラスが圧勝していたのを見かけてはいたが、いかんせん私自身がオペラを聴くことがなかったので、名前だけをしっかり覚えていた。
「トスカ」の凄さはもう一生忘れるものではないけれど、先日にぶらっと立ち寄ったCD店で、BGMとして流れていた「トゥーランドット」にはマイッた。涙ぐみそうになった。CD屋で女性が泣いていれば、いかにも深いわけがありそうで、ドラマの1シーンのようでもあるが、オッサンが泣くのは非常にまずい。なにしろ美しくない。その場はなんとか耐え抜いたが、カラスのコーナーに足が向いていったのは言うまでもない。
このCDは、映画に使われたカラスの音源を集めたもの。映画作家にもカラス好きが多いみたい。
使用した映画は、「永遠のマリア・カラス」(フランコ・ゼッフィレッリ)、「フィラデルフィア」(ジョナサン・デミ)、「マディソン郡の橋」(クリント・イーストウッド)、「マリーナ」、「薔薇の王国」(以上ウェルナー・シュレーター)、「ルナ」、「暗殺のオペラ」(以上ベルナルド・ベルトルッチ)である。
このうち、観たことがあるものは「マディソン郡の橋」と「暗殺のオペラ」だけど、オペラの音楽がかかっていたなんて全然覚えていない。カラスのファンなら、ほんの少し聴いただけで判るのだろうな。私も今ならわかるかも知れない。それほど彼女の声には特徴がある。
このCDには50年代のモノラル録音から60年代のステレオまで、ごたまぜにアリアが収録されているので、年代によってカラスの芸風が異なっているのがわかる。モノラル時代の「トスカ」や「椿姫」では声の艶やかさよりも情念を前面に押し出している。声そのものは決して美声ではないが、湧き上がる情感が豊かで、強い磁力のように引き寄せられるのだ。ステレオ時代にはいってからの歌い方は少し異なっていて、情感の表出が少ない代わりに、ひとつのフレーズを丁寧に歌っていてむしろ声としてはこちらの後年のもののほうが美しいように感じた。とはいえ、それぞれ10年も隔てていないのだから、芸風というよりも録音とか作品の性質によるものが強いかも知れない。
カタラーニの「ワリー」は懐かしい。懐かしいといってもアリア『さようなら、ふるさとの家よ』だけである。これも映画で知ったもの。ジャン・ジャック・ベネックスのデビュー作「ディーバ」で、登場人物であるソプラノ歌手が得意としていて、何回かこの曲が流れていた。とても気に入って、VHDも購入して何度も観たものである。もっとも今では再生機がないため、ソフトだけが寂しく棚に眠っている。PR
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