クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」を聴く(1960年1-2月、ロンドン、アビー・ロード第1スタジオでの録音)。
中学生の頃、この曲を好きすぎて毎晩寝る前に聴いていた。演奏は、プレヴィン指揮ロンドン交響楽団。図書館で借りたレコードをロケットのカセットテープ(5本で千円だった)に焼いたものを、寝床で聴いていた。1年くらいは聴いていただろうか。あれはいったい、なんだったのだろう。
そういうわけで「真夏の夜の夢」はプレヴィンのものをいまだに好んでいるのだが、同じころにこのクレンペラーの演奏も聴いた。メルヘンの香りが濃厚なプレヴィンに対し、男のロマンが漂うゴツイ演奏、という感想を持った。これはこれで、素晴らしかった。
それから40年近くたって、改めてクレンペラー。
全体的な印象は当時とあまり変わらないが、ゴツイだけではなく、じつは細部を丁寧に磨きあげていることがわかる。「序曲」は右から聴こえるヴァイオリンがとても効果的だし、「スケルツォ」での木管の沸き立つ様子は楽しい。白眉は、「舌先裂けたまだら蛇」。ふたりの歌手のしっとりとした歌いぶりは、むせかえるような芳香を漂わせつつ、たっぷりとした貫禄がある。まったくもって、目覚ましい歌唱。木管楽器を強調したクレンペラーのリードもいい。「間奏曲」以降も、明確で骨太な演奏。
やはりこれは、「真夏の夜の夢」のディスクを語る上で、はずせない演奏だと思う。
ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
フィルハーモニア合唱団
パースのビッグムーン。
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