ホフマンのトリスタン、ベーレンスのイゾルデ、バーンスタイン指揮バイエルン放送交響楽団・他の演奏で、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を聴きました(1981年、ミュンヘン、ヘラクレス・ザールでの録音)。
ユニオンには4枚組と5枚組があったのだけど、安い後者を購入。
演奏時間は、愛聴しているベーム(バイロイト)盤に比較すると以下の通り。
ベーム 1幕:75'18"/2幕:79'46"/3幕:71'27"
バーンスタイン 1幕:92'49"/2幕:90'19"/3幕:83'12"
ベームが速いということもあり、バーンスタインの遅さは際立つ。ただ、歌はゆっくりだけれど、許されないほどではなく、自然。オーケストラのみで演奏される部分にはムラがある。2幕の出だしは速くてすぐさま遅くなり、3幕の前奏曲は極度に遅い、など。他にもやたらと遅い部分があり、ときどき眠くなりました。
ただ、オケは全体を通して、弦楽器は粘りうねるし、キザミは細やかにくっきりと浮きたっており、躍動感はある。
ベーレンスはニルソンのような破壊力は見せつけないものの、星屑を散りばめたようなリリックな声がいとおしい。パワーもじゅうぶんにあり、聴きごたえがあります。とりわけ、2幕でトリスタンと再会する場面での爆発力!
ホフマンは、たんに声が輝かしいだけではなく、抑揚が曲線的でなめらか。命の弾力を圧縮したかのような力をたくわえ、ここぞというところで勢いよく解き放ち、大きなカタルシスを与えてくれます。いままで聴いたトリスタンのなかで最上級。
ミントン演じるブランゲーネは知性を感じさせるとともに、淡い色香を纏っていて素敵。ヴァイクルのクルヴェナールは筋肉質にして峻厳。ゾーティンのマルケ王は、若々しさと恰幅の良さとを併せ持つ。
トリスタンが息絶えるところは大変ゆっくりなので、ホフマンは苦労したと思うけど、「愛の死」は驚くほどではなかった。滔々と流れる清流のようなベーレンスの声で締めくくられます。
ズッシリとした4時間半を堪能しました。でも、もう少し速いほうが好みかな。
ブランゲーネ:イヴォンヌ・ミントン
クルヴェナール:ベルント・ヴァイクル
マルケ王:ハンス・ゾーティン
メロート:ヘリベルト・シュタインバッハ
牧童:ハインツ・ツェドニク
水夫:トマス・モーザー
舵手:ライムント・グルムバッハ
バイエルン放送合唱団
ハインツ・メンデ(合唱指揮)
PR