チェーホフ(神西清訳)の「ワーニャ伯父さん」を読みました。
「こんな天気に首をくくったら、さぞいいだろうなあ。……」
ワーニャは大学教授の書生みたいなことをしていたのだけど、教授の才能に見切りをつけ、厭世的になり、周囲をドタバタに巻き込んでいく。彼は自分勝手でワガママだけど、働くことを愛している。
チェーホフの作品をいくつか読んで気づいたキーワードは「労働」。それは主に、女性の口から発せられる。
このような流れがやがてはロシア革命になるのか、そんな俯瞰はできないけれど、共感しないわけにはいきませんでした。
バーンスタイン指揮ウイーン・フィル、他の演奏で、R・シュトラウスの「ばらの騎士」を聴きました(1971年3-4月、ウイーン、ゾフィエンザールでの録音)。
オペラは音楽だけを聴いてもなかなか楽しいものだけど、あらすじと、できればセリフを把握したうえで聴いたほうが、より面白いと思う。
そういう観点からすると、最初にDVDなどの映像、もしくはいきなり実演に触れるのが手っ取り早いかもしれない。対訳を読みながらの観賞は少々おっくうなので。
昨年は二期会と新国の公演に行く機会があり、予習としてクライバー指揮ウイーン国立歌劇場のDVDを観たけど、理解の一助になったものです。
さてこのCD、ポップのゾフィー狙いで購入しました。期待通りか、それ以上の歌唱を聴かせてくれます。喉を絞り上げるような高音は、夢のように甘くて、仄かな色香が立ち込めています。こんな女ならば、オクタヴィアンが心変わりするのも致しかたないでしょう。
オクタヴィアンはとても落ち着いた歌いぶり。クセがないので、言われないとジョーンズだとわからなかったかもしれない。
オックスは張りがあって艶やかな美声、これと役柄とのギャップが面白いように思います。
美声と言えば歌手もそう。ただちょっとドイツ語の発音に馴染まないように感じないでもない。
元帥夫人はコクの深い声。起伏は大きめだがいたって自然。人生の落日のような(夫人は推定約32歳なわけだけど)哀しみを歌いあげることにかけてルートヴィヒを超える歌手はなかなかいないでしょう。
オーケストラはバリッとしていて覇気がある。とても、よく鳴っている。それでいて、柔らかな感触は失われていないし、弦によるポルタメントなど細かなニュアンスが洒落ているところもある。不満なし。
なお、当録音はカルショーのプロデュースによるものらしい。デッカとのバーターだからそうなったのか、寡聞にして詳しくは知りません。
いずれにせよ、このCD、とても楽しめました。
クリスタ・ルートヴィヒ(元帥夫人)
ギネス・ジョーンズ(オクタヴィアン)
ルチア・ポップ(ゾフィー)
ヴァルター・ベリー(オックス男爵)
エルンスト・グートシュタイン(ファーニナル)
エミー・ローゼ(マリアンネ)
プラシド・ドミンゴ(テノール歌手)、他
ウィーン国立歌劇場合唱団
PR