★勝手にシューマンの日★「交響練習曲」。
なんとも堅苦しくて、中途半端な題名である。
交響曲なのか練習曲なのか、「はっきりせんかいっ!」と叫びたい衝動にかられる。
というのは大袈裟だが、ひとり静かに「もうちょっと、なんとかならないの?」とブツブツつぶやくくらいのことは言ってもいいのかと思う。
この曲を実際に聴いてみると、「クライスレリアーナ」よりもとっつきやすい音楽だ。
シューマン特有の憂鬱さ、幻想味、華やかさがごたまぜになっており、特に一般に「フィナーレ」として演奏される曲は、躁状態のシューマンの輝かしいダイナミズムが炸裂しており、聴いていて快感だ。
ただ、この曲については「遺稿」をどうするべきかという問題を孕んでいる。
「遺稿」を入れるか入れないか、もしくは入れたとしてもどこに配置するかで、全曲の有機的な統一感が異なってくるのだ。
何枚かのCDを聴く限りだと、みんなそれぞれ各曲の配列が異なっている。
個人的には、遺稿の「変奏曲第5」が好きだ。
これが入っていないと魅力が半減してしまうのである。
紫陽花の花びらに浮いている水滴のように繊細な、夢心地の音楽で、
この曲さえ聴いていれば、「あぶったイカ」がなくてもワインを1本あけられるくらい好きな音楽である。
遺稿の扱いについては、
tokupiさんの記事およびコメントに詳しく掲載されているので、ご参照下さい。
さて、私が最初にこの曲に触れたのは、ポリーニの演奏だった。
冴え渡る技巧がなめらかで心地よい。
遺稿の「変奏曲第5」が含まれている。
ワイン1本はかたい。
マウリツィオ・ポリーニ
(1983 DG 410 916-2) その後に、リヒテル盤を聴いてみた。
彼は録音に恵まれないピアニストのひとりだと思うが、このオイロディスク(もとはメロディアか?)経由でBMGから出た録音はなかなかいい。
彼の奏でるピアノからは、シューマンの苦悩と夢想のインスピレーションを聴きだすことができる。特に「変奏曲第5」は、何度聴いても色褪せない味わいがある。この演奏ならば、ワイン3本はいける。
全体的に、細かな表情づけと色彩感が素晴らしく、個人的にはこの盤を
ベストとする。
スビャトスラフ・リヒテル
(1971.9 BMG GD69082)その次は、アンドラーシュ・シフのCD。
「フィナーレ」の後に、遺稿の5曲が配置されている。
つまり「変奏曲第5」が最終曲となっているので、盛り上がって終わるのではなく、切ない夢心地で音楽の幕を閉じるのである。
ワイン2本である。
アンドラーシュ・シフ
(1995.1 elatus 0927-49612-2)ステファン・ヴラダーの演奏は良い加減の抑揚をつけた演奏であると思うが、やや霊感に乏しいような気がする。「変奏曲第5」は含まれている。
ワイン1本飲みきれるかどうか。
ステファン・ヴラダー
(1988.5 NAXOS 8.550144)ルービンシュタインのシューマンはいい。「ピアノ協奏曲」や「森の情景」の素晴らしさを知ったのは彼の演奏からだった。
この曲は、スケールの大きさと幻想味を併せ持つ好演だと思うが、遺稿を全て省略している。
19世紀生まれのヒトの習慣なのだろうか?
なので、ワイン半分。
アルトゥール・ルービンシュタイン
(1961.11.19 BMG BVCC-35078)そして、リヒテルのライヴ盤。
72年のものだが、モノラル録音で音質はあまり良くなく、解釈は71年のスタジオ版とほぼ同様なので、乱暴だが、スタジオ盤があれば、これは特に取り出すこともなかろうと思う。
リヒテル(ライヴ)
(1972.1.22 yedang YCC-0020)そのほか、キーシン、ポゴレリッチ、ペライア、またコルトーなど興味深いピアニストのCDが多数出ているようだ。
この曲についても、まだまだ楽しみが残っている。
嬉しい悲鳴というべきか。
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