ムジカ・チェレステ「春の歌曲とオペラの重唱三昧」 木曜コンサートに行く(2017年3月2日、松濤、チェレステ・スタジオにて)。
佐藤智恵(ソプラノ)
伊藤邦恵(ソプラノ)
加藤大聖(バリトン)
河野真有美(ピアノ)
演目は前半が歌曲、後半がオペラの重唱とに分かれていて、後半にはピアノ・ソロ曲も聴くことができた。
歌曲は日本の歌が4曲、モーツァルトが3曲、レオンカヴァッロとシューベルトが1曲ずつ。
日本の歌では、別宮貞雄の「さくら横ちょう」が印象的。物哀しい春の宵を、いくぶん硬質な、澄み切った声でのびのびと歌いきっていた。ソプラノは伊藤さん。
レオンカヴァッロの「Mattinata」は輝かしい歌。バリトンの加藤さんの声は広がりがあって軽やか、音の質は少しテノールに近いのじゃないかと思う。
シューベルトの「野ばら」は好きな曲。普段はアメリンクやボストリッジを聴くことが多い。この日は、それらに比べると、ややゆっくり目のテンポでもって、じっくりと野ばらの悲哀を描いていて素敵だった。
モーツァルトの「すみれ」もまた愛らしい音楽。これも伊藤さんが、まっすぐな、かつしっとりとした声でもって、すみれの悲喜劇を優しく紡ぎだした。
後半は、モーツァルトとヴェルディとドニゼッティのアリア、そしてブラームスのピアノ曲。
ピアノが掛け値なしに素晴らしかった。
モーツァルトの「魔笛」からは「恋の二重唱」、ふたりの歌手の闊達さもさることながら、ピアノの研ぎ澄まされた音色に心奪われないわけにいかなかった。
柳のようにしなやかな中低音から、水晶のように輝く高音まで、音色そのものだけでじゅうぶんな聴きものだったが、それに加えて、ひとつひとつの音が粒立っており、音楽を立体的に捉えることができた。さらに、歌手たちにぴったり寄り添い(歌の振り幅が大きくても、ズレることはなかった)、そして歌をかき消さないように、音量は慎重にコントロールされていた。
ソロは、ブラームスの間奏曲Op.118-2。河野さんはじっくりと丁寧にタメをきかせ、ややくすんだ音色でもって、ブラームスの晩年の世界を逍遥した。枯れた味わいと、静かに燃える慕情が滲んだ。
ヴェルディの「リゴレット」からは「慕わしい人の名は」と「娘よ、お父様」。ソプラノの佐藤さんを聴くのはこれで2度目。たっぷりとヴィブラートが効いた声は、とても華やかで潤いがあり、グラマラス、今生まれたような生命力に満ち溢れている。こうしたサロンで聴くのもいいけれど、もっと大きなホールであれば、さらに映えるのではないか。
使用されたピアノはスタインウェイだと思っていた。
ヤマハだと教えられたのは後のこと。
パースのビッグムーン。
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