薮田翔一の新作「祈りの歌」の世界初演に足を運びました(2019年5月28日、東京オペラシティコンサートホールにて)。
指揮:ジョゼップ・ポンス
ソプラノ:クレア・ブース
NHK交響楽団
薮田作品は歌曲を中心に聴いてきたので、オーケストラ音楽は初めて。どんなオーケストレーションなのか興味が湧きました。
彼の音世界は淡い水彩画のようだと以前に書きましたが、それはここでも随所随所に手に取れた。
とは言え、5プルトのヴァイオリン群を擁する二管編成だから、ときにずっしりとした厚みを増したマッシヴな響きが大ホールを満たしました。
それが特に面白かったのは2曲目。かつてチャールズ・アイヴズが描いた、アメリカの郊外都市の華やかで匂いたつような喧騒。そんな情景を想起させました。
5曲目からソプラノが登場。一聴して底力がある。そしてたっぷりと豊満。インストルメンタルの手法を採用したことは、声は楽器であることを念頭においたのであろう。彼がここで提示したかったものは、思想ではあるまい。
音楽は初夏のうららかな空気に溶け合い、たっぷりとした優しさをもって心に染み入りました。
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