大野和士指揮、東京都交響楽団・他の演奏で、ベルリオーズ「ロメオとジュリエット」公演に足を運びました(2019年9月16日、東京芸術劇場にて)。
この公演、大野さんの張りのあるリードが素晴らしかったことに加え、極めて堅牢な歌手と合唱、そして通常の公演では登場しないであろうバレエが大きな見どころでした。初秋の空のように変化の大きい大管弦楽をバックに、躍動感溢れ、ときにはまろやかな踊りを披露してくれた。この後に書きますが、バレエがとても効果的だった。
この曲の全曲を通して聴くのは初めてでしたが、改めてベルリオーズの作風のユニークさがわかりました。
吉田秀和はかつてベルリオーズを『作品の完成度という点では、ほかのはるかに天才の乏しい音楽家にも、おとりかねない』と評しました。やや同感。特に長い曲においてはムラがあり、ハッとするような場面があるいっぽうで、なんとも退屈なところが延々と続いたりもする。この作品もそうで、ソロや合唱が歌うところは陶然とさせられるけれど、管弦楽だけの箇所はときに単調で、あくびの我慢で涙が出る。
それでもこの作曲家を愛してやまないのは、類まれなインスピレーションの輝きを体感することができるから。
この日は、序奏に続く合唱、そのあとのメゾとテノールの歌唱、そしてジュリエットが自害してからラストまでをバスと合唱で歌われるくだりは素晴らしかった。清新でありつつ、深い慈愛とも言うべきものに満ち満ちた音楽。感動しました。
先程書いたように、管弦楽だけによる場面はときおり冗長なのですが、それをバレエが補っていたように感じました。踊りやすい曲ではなさそうだけど、振付と踊り手の妙味で違和感がなかった。いいアイディアです。
谷口睦美(メゾ)
村上公太(テノール)
妻屋秀和(バス)
東京シティ・バレエ団
安達悦子(振付)
新国立劇場合唱団
冨平恭平(合唱指揮)
さて、来る11月、この日に歌った村上さんが出演する『椿姫』のコンサートがあります。艶があって粋なアルフレートを演じてくれることでしょう。こちらも楽しみです。
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