ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団演奏会で、ブルックナーの交響曲8番を聴く(2016年7月16日、サントリーホールにて)。
この曲の実演は、1982年にNHKホールで聴いた、ヨッフム指揮バンベルク交響楽団の演奏が基準になるので、かなりハードルが高い。
でも、この日のノットと東京交響楽団は、すごく完成度の高い演奏を聴かせた。
奏者の技術、そして指揮の技巧という点では、世界を見渡してみても負けないくらいに高く(強いて言えば、トランペットが弱かったように思うが)、そうそうあるようなレベルではなかったと感じる。
テンポの適切さ、そしてうまい具合に収縮する変化は、自然と腑に落ちる見事な捌きであった。
技術的に最も難しいであろう、ホルンとチューバ、トロンボーンはピアニシモも難なく吹きこなし、思わず背筋が伸びた。
各楽器間のバランスがいいから、金管が最強音を出しても、けっしてうるさくなかったし、響きに透明感すらあった。
じっくりと粘りに粘ってのフィナーレ、最後の「ミ・レ・ド!」は、もっとゆっくりやって欲しかったが、これは好みの問題。1月にやったスクロヴァチェフスキも最後は快速だったから、これは流行りなのかな?
全体を通しては、堅牢にしてロマンの香りが溢れる立派な演奏だった。
ただ、バンベルクでのヨッフム、あるいは、NHK交響楽団を振ったマタチッチやチェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのような、なんとも言い難いオーラのようなものは、希薄だったと感じる。
もっとも、あそこまでいってしまうと、もうお迎えが来ている、ということでもあるから、それを彼らには求められないだろう、とも思う。
図書館。
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