ワーグナーの「パルジファル」は、バイロイト音楽祭のFM放送をよく聴いていた。80年前後の頃だから、シュタインの指揮によるものだ。
セリフの意味をわからぬまま、寝転がってうたた寝をしながらの聴取だから、まあキチンと聴いたとは言い難い。たゆたう音楽にただ身を任せていた。
そのあと、カラヤンがクンドリーにヴェイソヴィチを起用して話題になったLPを聴いた。これはとても美しい演奏であった。
それ以来、「パルジファル」を聴いてこなかったが、久々にショルティの指揮で聴いた。この1ヵ月で5回。←ヒマ。
この曲をこんなに集中的に聴くことは、もうあるのかどうか。
このオペラといえば、クナッパーツブッシュ/バイロイト祝祭管とカラヤン/ベルリン・フィル盤ばかりが評価が高い。でもショルティ盤をじっくり聴いてみると、その完成度の高さは、カラヤンに比肩するか、あるいは上回るものじゃないかと感じた。
まず、歌手陣がスゴイ。映画で言えば「史上最大の作戦」クラスと言える。主役級から端役に至るまで、贅を尽くした配役である。
コロは万全。若々しくストレートな声が輝く。
ディースカウのドイツ語は相変わらず素晴らしい。むろん、なにを語っているのかは皆目わからないが、発声そのものが音楽に抑揚をもたらす。
フリックは終始、重厚で荘厳。この音楽全体を支える大黒柱のよう。
ルートヴィヒは好きな歌手だが、クンドリーには少し合わないような気がする。
そしてオーケストラ。
ウイーン・フィルはショルティを好まなかったというが、当時はお互いデッカの専属だったので、録音は多い。
しかし、ウイーン・フィルをこれだけ雄弁に、力強く鳴らすことのできる指揮者は、他にいるだろうか?
この大曲の隅々にまで、キッチリと目が行き届いており、全てのフレーズに熱い血がたぎっている。ほどよい緊張感を保ちつつ、情緒も豊か。
「レコード芸術」の名盤セレクトではいつも下位に甘んじているディスクだが、なんのなんの、素晴らしい出来である。
ルネ・コロ(パルシファル)
クリスタ・ルートヴィヒ(クンドリー)
ハンス・ホッター(ティトゥレル)
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(アンフォルタス)
ゴットロープ・フリック(グルネマンツ)
ゾルターン・ケレメン(クリングゾール)
ロバート・ティアー(第1の聖杯騎士)
ヘルベルト・ラクナー(第2の聖杯騎士)
ロートラウト・ハンスマン(第1の小姓)
マルガ・シムル(第2の小姓)
ハインツ・ツェドニク(第3の小姓)
エーヴァルト・アイヒベルガー(第4の小姓)
ルチア・ポップ、アリソン・ハーゲン、アン・ハウエルズ、キリ・テ・カナワ、ジリアン・ナイト、マルガリータ・リローヴァ(花の乙女たち)
ビルギット・フィニラ(アルト独唱)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン少年合唱団(合唱指揮:ノルベルト・ヴァラチュ)
1971年12月、1972年3月、ウイーン、ゾフィエンザールでの録音。
砂浜。
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