ドストエフスキー(亀山郁夫訳)の「カラマーゾフの兄弟1」を読む。
これを読むのは、学生の頃以来で2度目。ざっくりとしたあらすじは覚えているものの、細かいところは忘れ去っている。
カラマーゾフの4人を中心に物語は展開される。キーとなるのは、この男たちが尋常ではないくらいに「女好き」なこと。それが原因となり、フョ―ドルとドミトリーとの確執が生まれたし、アリョーシャは修道院で暮らす。
女たちの生態も詳しく描かれている。この巻の最後のほうに、ドミートリーをめぐってカテリーナとグルーシェニカが駆け引きをするシーンがあるが、その怖いこと。このコワさは、父子の喧嘩どころの話ではない。女の争いは、恐ろしい。
この小説の大きなテーマのひとつは、神はいるのか、という問いかけである。学生のときはそのあたりの感覚がわからなかった。キリスト教徒にとっての神とはなんなのか。それは今読んでもピンとくるものではない。肩肘張って読むと、そうなる。
ただ、日本人が漠然と感じている「神」を想定して読むのもアリではないだろうか、という気が今はする。
続きは、また。
グリモーのピアノ、ジンマン指揮ボルチモア交響楽団の演奏で、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調を聴く。
以前、この曲を苦手だとこの欄に書いた。だが、この演奏で聴くと文句なしに素晴らしい。ピアノもオーケストラも、なんと生き生きとしていることか。
アルゲリッチ/アバドBPO、ミケランジェリ/グラチス、フランソワ/クリュイタンス、ブランカード/アンセルメ、ロジェ/デュトワ、シュヴァイツァー/ミュンシュ、それから先日のバーンスタインの弾き振り。もちろんこれがディスクのすべてではないが、わりと聴いていると思う。だが、これだ! という手ごたえはなかった。ミケランジェリのものは定評があるが、録音状態がいまひとつだし、バーンスタインはオーケストラはいいもののピアノが今一歩。
だから、グリモー盤もあまり期待しないで聴いたのだが、ストンと腑に落ちた。いままで聴いた中で一番いいし、こういう演奏をしてくれるならばこの曲をもっと聴きたい。
ピアノは一粒ずつがキラキラと輝いている。そして、フレーズに弾力のある抑揚をつけて、うまい具合に弾き崩している。ジャズのイディオムを十分に生かしたピアノであり、リズム感・スピード感ともに申し分ない。2楽章は幻想味と色気とがいい按配でブレンドされていて出色。
オーケストラもいい。1楽章のファゴットは名技だし、ところどころ鳴らされる大太鼓と小太鼓は、痒いところに手が届く。3楽章は切れ味がよくて気持ちがいい。明るくて軽やかな色調は、この曲にぴったり合っている。
録音は鮮明。文句なし。
1997年5月、ボルチモア、ヨセフ・マイアーホフ・シンフォニー・ホールでの録音。
ヨットから。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR