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マゼールのラヴェル「管弦楽曲集」

2008.12.28 - ラヴェル

maazel

ラヴェル「管弦楽曲集」 マゼール指揮 ニュー・フィルハーモニア管


酒巻久の「キャノンの仕事術」を読む。
ビジネス書の多くは成功者の手で書かれている。
成功者が書いているから、ビジネス書の多くは、説教と自慢話で満ち溢れているといってもよい。そりゃ、成功したわけわけだから、自慢話のひとつやふたつしたくなるだろう。逆に、説教と自慢話がなかったら、多くのビジネス書は成り立たないというか、何を書いていいかわからないに違いない。
なので、私がときどきビジネス書を紐解くのは、成功者の自慢話を聞いてみようと思うからだ。
成功者は、もともと才能があるので、正直いうと実はあまり参考にならないことがほとんどなのだが、自分にも応用できそうな訓話が、たまにはあるので読むわけだ。
キャノン電子の社長である著者は実業界の成功者であるわけだから、この本も例外ではなく、説教と自慢のオンパレードであると言える。そういう意味でまったくオーソドックスなビジネス書だ。期待を裏切らない。
この本で印象的だった言葉はいくつかあるが、笑えたのがこれ。
『ビジネス書ならば、絶対に翻訳物がいい。欧米の著作は、作者の主張したい独自の視点が明確で、それを証明するためのデータをがっちり集めてくる』。
自分の本を暗に批判しているのか。というか、暗なのか…。
不思議な著者である。


マゼールのこのラヴェルは、70年代前半のもの。
「ボレロ」は比較的速めのテンポで進んでゆく。ソロがみんなうまい。オケのメンバー、気合が入っているようで聴き応えがある。ひとつひとつの楽器を順番に味わっていると、もうあっという間に終盤にさしかかっている。終結部ではグッとテンポを落として大見得を切るのはマゼール流。
「逝ける王女のためのパヴァーヌ」、ホルンがすばらしい。パリ音楽院のようなひなびた味わいではないが、柔らかくてコクがあり、ちょっとつや消しされた黄金色にしっとり輝いている。オーボエの厚く毅然とした音色もすばらしい。音そのものはがっしりしているけれど、なんだか悲しみの漂う音色なのである。
「道化師の朝の歌」は音響的な華やかさとはうらはらに、ちょっとアンニュイで気だるい雰囲気が心地よい。
ここではニュー・フィルハーモニアがとても透明な響きを醸し出していてステキだ。
「ラ・ヴァルス」は実に流れがいい。そして、音が独特。シンバルと大太鼓のあたかも羽毛のような感触を始めとして、合奏がじつにマイルドな音を聴かせる。夢のなかで聴いているような、ちょっと現実からかけ離れたような、ヴェールのかかった音なのである。
どうやらマゼールは、曲によって音色に変化を持たせているみたい。4つの曲を続けて聴くと、あたかもひとつの交響曲を思わせる、なんていうとちょっと穿っているけれど、それぞれ趣向が異なるコース料理のような彩りを楽しむことができる。
EMIの録音は万全。昨日聴いたワイセンベルクのブラームスとは大違い。いつも、こういう録音であってほしいもの。


1971年6月、ロンドンでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

読書、いろんなジャンルを読まれていますね〜。
私はどうも好きなものばかりを読んでしまいます。
音楽もそうなのですが〜。

カラヤンとワイセンベルクの演奏はライヴで聴きました。凄かったです〜。カラヤンはライヴでは振りまくっていました。

マゼールという指揮者、不思議ですよね
演奏は水準以上のものばかりですよね
その割に、どれが良いのか、ちょっと分かりにくいです。ラヴェルも面白そうですね〜。

ミ(`w´彡)
イギリスのオケストラは、上手いですよね〜。
日本では見向きもされていませんが〜 爆〜。

2008.12.29 Mon 07:20 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

遠距離の電車通勤なので、本をかかせません。
たまに忘れると、ヒマで参ります。
「フロスト日和」読み始めました。最初からフロスト節が全開です。年末年始はこれを読んで過ごそうかと〜。

カラヤンとワイセンベルクはライヴですか。いいですね〜。なんて豪華な組み合わせでしょう。

マゼールも、カラヤンやショルティほどじゃないにしても水準以上のものを残していますね。
ちょっとあざといところを気に入っています。
このラヴェルも面白いです。
そうそう、イギリスのオケストラは上手いですね。
最近は主に70年代のものを多く聴くのですが、とてもレベルが高いと思います。
2008.12.29 12:50

無題 - mozart1889

マゼール、イイですねえ。大好きです。もう聴いていて、何かしてくれるんじゃないと期待ワクワクです。
特にこのラヴェル、エエですね。「ボレロ」など、あざとく大変エグイです。ラストで、音楽が崩壊しそうな感じでテンポを落とすところなど、初めて聴いたときはびっくりしました。でも、また聴きたくなるんです。
「ボレロ」は何度も録音していますが、最も新しいのはVPO盤でしょうか。これTBしてみます。
2008.12.30 Tue 05:33 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントとTBをありがとうございます。

マゼールお好きですか。私もなんです^^
曲によっておとなしいものもありますが、このボレロはいい感じです。ラストではずっこけました。
VPOとのものも、やらかしているようですね。
相手構わずオレ流といったところでしょうか。
この演奏ではニュー・フィルハーモニア管が技をみせます。イギリスのオケはうまいものだとしみじみ思いました。
2008.12.30 12:41

無題 - neoros2019

とにかく六十年代から七十年代前半のマゼールはどんな素材をもってきても天才的に「かっこよく」仕上げてしまう超人とわたしの眼には映りました。
これが怖ろしく、過激にかっこいいんですね
偶然ですが六十年代のマゼールの眼は同じく六十年代のスタンリー・キューブリックの眼にそっくりだといつも個人的に感じていました
まなざしに芸術的な悪魔が宿っているというか……
2008.12.31 Wed 14:10 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

>とにかく六十年代から七十年代前半のマゼールはどんな素材をもってきても天才的に「かっこよく」仕上げてしまう超人とわたしの眼には映りました。

同感であります。この時代のマゼールはカッコイイですね。
70年代後半以降も決して悪くないのですが、この時代のほうが魅力的に感じます。
マゼールとキューブリック、音楽と映像との違いはあるものの、キレのある鮮明な芸風は共通するところあるかもしれません。
neoros2019さんのコメントを拝見すると、むしょうにマゼールを聴きたくなるのですよ!
2008.12.31 15:53

カーオディオのBGM - neoros2019

今日もクルマの移動中、この71年NPOのラヴェルと‘73クリーブランド管のプロコフィエフ/ロメオを流して悦に入ってました。
既発のCDではなく、ある業者にアナログLPからCDに焼き直しを依頼して作ってもらった代物です。
ぜひ芳野さんに、このアナログLPから板起こししたこの2枚のCDを聴いてもらいたいですね。
おなじマゼールファンとして。
これこそ、この2枚こそXRCDやシングルレイヤー専用の高付加価値盤として復活させて欲しいものです。
2016.05.10 Tue 19:20 [ Edit ]

neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

マゼールのラヴェルとプロコですか。
いいですね~。
レコードのほうが音がいいにしても、焼き直ししてもやはりいいのですか?
普段はあまり音質にはこだわらず、ごくフツーのCDを聴いていますが、比較すれば違うのでしょうね。
マゼールは、いいですね!
2016.05.10 22:51
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