モーツァルト「管楽五重奏曲」レヴァインとラヴィニア音楽祭のメンバー染谷和己の『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』を読む。
スゴイ題名である。ちょっと引いてしまったが、読み始めると意外にまっとうな内容である。
とくに前半は実務的に教えられる項がいくつかある。『報告は「仕事の成果」より大事なのだ』というあたりや、『間違った決定のほうが、決定しないよりはるかに優れた決定である』といったあたりなど、実際の状況によって異なる場合はあるものの、考えてみれば一般的にはこういう考え方がわりと浸透しているのだと考えさせられた。
本の最終部あたりにくると、『敗北の惨めさを想って敵を倒せ』とぶちあげはじめ、どんどん精神論が強くなっていき、生存競争の厳しさを説いてフィナーレとなるのだった。
後半は、読むのが少々つらかった。
こちらは、うって変わって楽しい音楽。
当時レヴァインが音楽監督だった、ラヴィニア音楽祭のメンバーを集めて録音したディスク。
ラヴィニア音楽祭なので、実体はシカゴ交響楽団のメンバーというわけ。ときに、ショルティ監督全盛期、名人揃いだ。
みんな文句なくうまい。伸びのあるストレートを中心とした直球勝負。弾き(吹き?)崩すところはなく、カッチリと几帳面な演奏である。これはショルティの影響なのかもしれないが、そう、レヴァインだってけっこう直線的な音楽を作るヒトなのだ。
管楽器のなかでは、オーボエがリーダー的な役割を担当しており、曲のとっかかりからピシッと方向性を決めている。スティルのオーボエは終始軽快。クレヴェンジャーのホルンは、いつもオーケストラ曲をやるときとはどことなく違う。木のような柔らかい音色を醸し出している。数少ないソロのシーンでは、充実した響きを楽しめる。
なめらかなブロディのクラリネット、濃い響きを聴かせるエリオットのファゴットも、ともにソロの出番は少ないものの、実に安定している。堅実そのもののレヴァインのピアノを基調として、全体的にマジメそのものなので、もっと遊びがあるものと期待するとあてが外れるかもしれない。
モーツァルトがこの曲を作った当時、父へあてた手紙に「生涯のこれまでの最高作品だと思っている」と書いたという。
ことに2楽章ラルゲットの、おだやかな陽だまりみたいなあたたかさが胸にしみいる。
1977年7月、シカゴでの録音。
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