ホルスト「惑星」 ウィリアム・スタインバーグ指揮ボストン交響楽団小野俊哉の「プロ野球解説者の嘘」を読む。
解説者に対する苦言はまえがきだけで、本編はプロ野球の関するデータをひたすら開陳する。どれも面白かったが、なかから「4割バッターは誕生するか」の章を少し紹介。
ここで著者は、独自の指標を用いてメジャーで過去に達成したバッターを分析する。それによると、分母つまり打数が少ないほうが高打率を稼げるとのこと。当たり前といえば当たり前だが、ここから意外な事実が浮かび上がる。それは、最近もっとも4割に近づいたのは、2004年のボンズだということ。
敬遠120個を含む四死球が232個(!)であったことから打数は373にまで圧縮され、135安打を打って打率は.362。これだけだとそれほど高い数値ではないが、あと15本打てば4割に届いたという計算だ。
同じ年にアメリカン・リーグのイチローが史上最多の安打を放っているが、実はボンズのほうが近かったというのはなんだか皮肉である。でも、お互い目指す方向が違うわけだからこれもヨシ。
ホルストの「惑星」をスタインバーグの指揮で。
速めのテンポでぐいぐいと押していく火星がいい。アクセントに特徴があって、やられてみると納得の味付けだ。トランペットがいくぶん荒い気がしなくもないが、流れは損なっていない。
以降の各「惑星」は全体的にとても精妙な演奏。響きはおおむね軽め。キンキンに冷えたコーラをざらついた氷たっぷりのコップに注ぎ込んだような泡立ちの快感に加えて、手相を虫眼鏡で眺めてみたときの、筋が一本一本リアルに浮き上がってくるようなきめ細かさも持ち合わせている。
ボールト/ロンドン・フィルやマリナー、マゼール、ショルティなどの録音が立て続けに出たのは、70年代後半から80年代始めの頃。ちょっとしたブームだったわけで、本演奏はそれより少し前のもの。だから、聴く前はいささか古いのかなとの印象を持っていたが、とんでもなかった。
数ある録音のなかで、このスタインバーグ盤を第一に推しても後悔はないかも。録音もシャープで素晴らしい。
合唱は、ニュー・イングランド音楽院合唱団。
1970年、ボストンでの録音。
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そうそう、スタインバーグ盤は、DGにおいてはカラヤン/BPOやレヴァイン/CSO盤に先行していますね。後者は以前に聴いているのですが、スタインバーグは初めてでした。
あまりのよさに参りました!