柳川範之の「40歳からの会社に頼らない働き方」を読む。
高度成長期みたいに一度入社した会社を定年まで勤めるという意識は、今の時代は薄れていると思う。それでもなお、新卒の学生たちは一応は定年まで勤めるべく会社を選ぶだろう。
ただ、途中でリストラされることもあるだろうし、会社に不満があって転職することもある。定年まで会社そのものが存続するかどうかだってわからない。
だから働く人はみな、常に自分のスキルアップを計っていかないとうまくない。
幸か不幸か、年々人の平均寿命は延びている。これからは年金だけでは暮らしてゆけないだろう。となると、60あるいは65歳からも稼ぐ必要がありそうだ。
著者はそこで、プレゼン能力がもっとも必要になると言う。ひらたくは、自分を売り込むことだ。自分に何ができるのか、何をしたいのか、どうすれば会社に貢献できるか。そのために自分の能力の棚卸をする。客観的にみて何ができるのかを吟味し、就職活動あるいは起業活動に備えるというわけ。
好んで働きたくはないが、ぶらぶらしているのも退屈なもの。欲しいのは、楽しんで仕事ができるスキル。
カルミナ四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲15番を聴く。
4丁の楽器が、ほろほろとほぐれていて見通しがいい演奏。ことに素晴らしいのは3楽章「病癒えし者の神への聖なる感謝の歌」。この曲の白眉になるわけだが、とても繊細に、思い入れたっぷりに弾いている。ヴィオラとヴァイオリンの淡い詩情がたまらない。
1楽章は一歩一歩を踏みしめるようにじっくり。ここぞというときのトルクも強い。ラントガストフーフの響きが美しい。
2楽章は不思議な重量感のある音楽。後年のメンデルスゾーン「イタリア」のスケルツォを想起させる。とてもデリケートな演奏。
3楽章は前に書いたとおり素晴らしい。密度が濃い。年寄りならではの屈折した明るさを、この四重奏団は正面から受け止めて弾き切っている。コクのある響きがこよなく美しい。
経過句とも言える4楽章を堅実にこなし、5楽章。これは大人の余裕を湛えたシリアスな歌。スプーン一杯の諧謔もあり。
カルミナ四重奏団は、個人技もいいが合奏力も高い優れたグループ。カップリングの「ラズモフスキー3番」もいい。
1998年6月、スイス、リーエン、ラントガストホーフでのライヴ録音。
キングズパークの秋。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR