ベートーヴェン「ピアノ三重奏第7番」 アシュケナージ(Pf) パールマン(Vn) ハレル(Vc)鎌田慧の「自動車絶望工場」は、トヨタ工場の季節工として実際に働いた著者が記した潜入ルポ。
極限まで効率化を推し進める結果、どんどんとスピードが上がっていくベルトコンベアーとの戦い。とりこぼしが出るとコンベアーは停止し、周囲の顰蹙を買う。それならまだいい。機械に指を落とされる作業員や、死亡者も続出する過酷な現場。作業のキツさのため、ほとんどの季節工は期間満了の手前で辞めていく。
労働者は取り換えのきく部品。何人辞めたって、代わりはどんどん入ってくる。
舞台は1972年から73年のものだけど、現在も状況は変わらない。悪化しているようにもみえる。「効率化」とは人減らし。トクをするのは誰か。経営者なのか、それとも安くクルマを買うことができる消費者なのか。安い買い物をとるか働きやすい労働環境をとるか、ということになれば後者をとるかな。トシのせいか。
今夜は大公。
ちょっと古いナ。
アシュケナージとパールマン、ハレルによるピアノ三重奏。曲そのものがそういう構成になっているのだろうけど、アシュケナージのピアノが主導している。柔らかく丸い音質はいつも通り気持ちのよいものだし、ふたりをリードする姿勢も堂に入っている。ときおり見せる装飾音のくずしかたやタメの作り方は、けっこう洒落ている。
パールマンの伸びやかで太い音色はいつもより抑え気味のよう。アンサンブルに焦点を当てている感じ。ハレルのチェロはふかぶかとしていてみずみずしい。響きそのものはパールマンに似ているようだ。気のせいか。録音のせいか。
1982年2月、ニューヨーク、RCAスタジオでの録音。
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