グリュミオーのヴァイオリン、ハスキルのピアノで、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ9番「クロイツェル」を再び聴きました(1956-57年、ウイーンでの録音)。
このベートーヴェン全集は、約10年前にHMVで1500円ちょっとで購入したもの。グリュミオーとハスキルのコンビではモーツァルトも有名ですが、このベートーヴェンもかなり聴きごたえがあります。
ヴァイオリンとピアノの音が良く溶け合っています。一部合奏がズレるところも散見されますが、再びあらわれるフレーズではキチンと修正されており、まるでライヴのような生々しさを感じます。
グリュミオーのヴァイオリンは、音に磨きをかけることに専念するよりも勢いを重視しているかのようであり、熱い気迫を感じます。それは冒頭から最後まで一貫している。それでも音程の精確さ、艶やかさは充分に担保されているため、従来から抱いているこのヴァイオリニストに対しての印象は変わりません。エレガント。
ハスキルのピアノは録音のせいか、輪郭のぼやけた響きになっています。音が立っていなくて、柔らかいご飯のよう。その中で聴きどころは2楽章のトリル。ここが突出して美しい。まるで採れたての真珠のようにしっとりとした深い光を湛えており、ここだけを何度も聴きかえしたくなります。
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