イタリア弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番を聴く(1969年6月、スイスでの録音)。
これは、音色がきめ細かいベートーヴェン。全体を通して中庸なテンポを設定しており、真正面から直球勝負を挑んでいる。
1楽章は、アダージョ、壮大にして重厚な序奏。くすんだ色の弦がうねっている。
2楽章アレグロは明るい色調。4つの楽器が愉悦にみちて飛び跳ねる。音色がいい。木の香りがする。
3楽章は経過句。この演奏では58秒。これはなにを意味しているか? ベートーヴェンに訊いてみたい。
アンダンテの4楽章は、この曲で一番長大。おっとりとした表情は、人生の楽しみや苦しみを超越したかのよう。じつに滋味深い。いくぶん湿度の高いイタリアSQの弦楽器はとてもよく歌っている。
5楽章はプレスト。ここも、やや粘り気のあるイタリアSQの音がおいしい。自然な抑揚がついており、温かみがある。
6楽章アダージョ、この曲も短い。3楽章と対をなすようにも思えるがどうなのだろう。苦渋に満ちた音楽。
一転して7楽章はアレグロ。人生の困難に打ち克とうとする、強い意志の音楽。メロディーはとんでもなくカッコイイが、これほど堅苦しい音楽もそうそうないだろう。
装飾音をつけながら疾走するヴァイオリンが見事。
このくらいの音楽になると、変化球は通用しないのだろうか。
駐車場。
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