アレクサンダー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番を聴く(1996年1月、カリフォルニア、ベルヴェデーレでの録音)。
これは若々しくて伸びやかな演奏。
アレクサンダーSQは、硬めの音色を生かした直線的なスタイルをとっている。
1楽章は4つの楽器がとても雄弁。松脂が飛び散るのが目に見えるみたい。とくにチェロは存在感があるし、ヴァイオリンのポルタメントも素敵。
2楽章も同様で、楽器がのびのびと鳴る。
3楽章は突風のような音楽。やはりこの演奏もわけがわからぬまま、もう終わっている。
4楽章は少し饒舌なアンダンテ。よく鳴る。音がまっすぐに伸びていて気持ちがいい。音そのものは、深みより広さを追求しているかのよう。演奏者たちの眼差しは優しい。
5楽章は出だしのチェロが速いのでびっくりしたが、すぐに聴きなれたテンポに戻る。でも、切っ先は鋭い。
6楽章はやや激しい。弦楽器が軋んでいるよう。
7楽章も動きが大きい。ヴァイオリンはやや感傷的な歌い回し、そこにチェロは太い楔を打ち込む。最後に4人が奏でる和音はすごい迫力。
いままでアレクサンダーSQによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いてきたが、BOXのなかでこの曲がひとつの頂点となる演奏と言えるだろう。
14番には古今東西、さまざまな名演奏があるが、このアレクサンダーもそれらのひとつに数えたい。
フレデリック・リフシッツ(ヴァイオリン)
ゲ・ファン・ヤン(ヴァイオリン)
ポール・ヤーブロウ(ヴィオラ)
サンディ・ウィルソン(チェロ)
パースのビッグムーン。
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