アマデウス四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲15番を聴く
(1962年4月、ベルリン、イエス・キリスト教会での録音)。
アマデウス四重奏団のベートーヴェンを聴き始めて2ヶ月あまり。残りは、あと2曲となった。
今日はなかでも好きな15番。作品番号では132。外盤は作品番号で表記されているものが多くて、このDGのリブレットもそう。作品番号では覚えが悪く、調性と楽章の数で曲を探り当てたりしている。
さてこの15番、いままで聴いた演奏と比べると、音がギスギスしているというか、こもっているように感じる。演奏というよりも、録音の按配だろうと推察する。同じロケーションでも、時によって異なるものだ。
以前にも違う演奏で書いたが、繰り返そう。ベートーヴェンはこの曲を当初4楽章として構想したが、腸カタルに疾患し作曲を中断、再開したときは病からの回復の感謝をこめて1楽章追加している。なので、合計5楽章。追加したものは真ん中の3楽章に配置されており、「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」と題している。曲の長さといい内容の深さといい、この曲の中核となる。
アマデウスは、ここでぐっと腰を落として、研ぎ澄まされた技をもって、芳香に満たされた花芯を触るかのように慎重に音を奏でる。これはいっときの幸福に違いないが、はしゃいだりするでもなく、じつに穏やか。そして官能的。ブレイニンのヴァイオリンはしっとりとしており、濡れた瞳のよう。演奏も、この楽章が突出しているようだ。
経過句のような4楽章で、ふと我に返る。そしてシリアスな5楽章でまた、黄泉の世界に片足を踏み入れ。この楽章、いつ聴いてもカッコいい。
ノーバート・ブレイニン(第1vn)
ジークムント・ニッセル(第2vn)
ピーター・シドロフ(va)
マーティン・ロヴェット(vc)
図書館。
PR