ヘンデル フルート・ソナタ集「小泉八雲集」より『おしどり』。先週末の新聞の読書欄で佐藤優が薦めていたので、早速読んだ。
獲物を捕るのに失敗した鷹匠が、帰り道に見かけたつがいのおしどりを撃ち、夕飯にする。その夜、生き残った雌のおしどりが夢に出てきてうらみごとを残す。気になった鷹匠は翌朝におしどりを撃った沼に行くと、衝撃的な出来事が起こる。それを機に、鷹匠は出家する。
人間は生きていくために生き物を殺さなければならないことの不条理が端的に描かれている。たった3ページたらずのなかのドラマとしては、あまりにも濃密だ。
「小泉八雲集」、まだ途中だが、こんなに面白いものが世の中にあった。目から鱗。もっとも、不勉強なのだから新しい発見は多いに決まっているんだけど。
ヘンデルのフルート・ソナタも、最近覚えた面白いもののひとつ。このCDには8曲(楽章単位だと37曲)あるのだけど、短調のものが多い。少しは長調の曲もある割には、全部通して聴いた感じは、明るい音楽は少ないように思えた。シリアスで高貴な佇まいがあり、ちょっと近づきがたい雰囲気があるが、何度聴いても不思議と飽きることがない。
クイケンのフルート・トラヴェルソは肉厚でありつつ、目に涙を溜めているような悲しみがにじみ出ている。
1曲目のホ短調の旋律が、8曲目にほぼ同じ形で登場する。お帰りなさい、といった風情は、運命の主題というか循環形式みたい。と思って聴いていたら、HWV359とHWV379は基本的に同じ曲であった。後者が1楽章増えて増強(?)されている。いずれにしても、こうしてみるとソナタ集がひとつの作品のように構成されているように感じる。これはクイケンの案なのかどうか、わからないが工夫を感じる並びだと思う。
もっとも、この曲の演奏における慣習なのかもしれないナ。
ホ短調 Op.1 HWV359
ニ長調(ト長調) HWV363b
ロ短調 HWV367b
ニ長調 HWV378
イ短調 HWV374 ハレ・ソナタ1番
ホ短調 HWV375 ハレ・ソナタ2番
ロ短調 HWV376 ハレ・ソナタ3番
ホ短調 HWV379
バルトルド・クイケン(フルート)
ヴィーラント・クイケン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ローベル・コーネン(チェンバロ)
1991年9月、ベルギー、聖アポリネール教会での録音。
PR