忍者ブログ

"文学の四十年"、ラインスドルフ、"トゥーランドット"

2014.09.27 - プッチーニ

so



小林秀雄の対話集「直感を磨くもの」から、大岡昇平との対話「文学の四十年」を読む。

この対話は1965年に行われた。ここで言う40年とは、大岡と小林が初めて出会ったときからの歳月をさしている。
大岡は小林に比べてだいぶ年下であるにも拘らずタメ口で話している。出会った頃が学生だったからなのかもしれない。当時小林といえば文士の天敵(?)。それを相手に物おじせず自然に対話しているところが愉快。

全部で19ページは他の対話に比べて短いが、なかでは柳田國男に関するやり取りが面白い。
柳田は亡くなる直前に小林に録音機を持たせて呼んだ。日本人の道徳観について言い残したかったらしい。しかし話は横道へそれ、うまくいかなかった。それを大岡が引き取っている。

大岡「日本全国から民話を集めたのは動かせない功績だよ。だけれど、全国の後輩から吸いとって自分の説として発表したそうだ。死ぬときになって気になったというのは、それじゃないかな」。
小林「そうか」。
大岡「だと思うな。日本人が死にぎわになってちょっと言うということは、とかく私生活のことなんだがね」。

微笑ましい。







ラインスドルフ指揮ローマ歌劇場の演奏で、プッチーニの「トゥーランドット」を聴く。

聴きどころは言うまでもなく、ニルソンのタイトル・ロール。肉厚で風格たっぷりな佇まい、そして音速を超える戦闘機を思わせる破壊力。いざとなりゃ、フル・オーケストラのフォルテッシモのはるか上を、涼しげに飛んでいく。

彼女のための録音と言っても、さほど語弊はないかもしれない。でもこのオペラは、トゥーランドット姫は2幕以降からしか出てこないから、他のメンバーも重要。テバルディの艶のある歌は素晴らしい。押し出しの強くないところが、この役にぴったり。線の細さが生きている。ビョルリングは力強い。明快にしてまっすぐな声が冴えわたる。いかにも頑固で率直な男という雰囲気を醸し出している。懐かしのデ・パルマがいるピン・パン・ポンは軽快。

そして、ラインスドルフ。予想以上にいい。スコアにして何十段あるかわからないが、この大オーケストラに加えて合唱があるのに、副声部まですみずみ聴こえるくらいに見通しがいい。なのに、とても自然であり、作為を感じない。リズム感がいいからだろう。それにひと癖もふた癖もあるであろうソリストをまとめあげる技量。手だれの技を見せつけられた。

RCAのリヴィング・ステレオは素晴らしい。半世紀以上前のものとは思えないし、部分的には現在の最新録音も上回ると思う。


トゥーランドット:ビルギット・ニルソン
カラフ:ユッシ・ビョルリング
リュー:レナータ・テバルディ
ティムール:ジョルジョ・トッツィ
ピン:マリオ・セレーニ
パン:ピエロ・デ・パルマ
ポン:トマゾ・フラスカーティ
アルトゥム:アレッシオ・デ・パオリス
役人:レオナルド・モンレアーレ
ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団


1959年7月、ローマ歌劇場での録音。




冷やし中華とツイッター始めました!




ma


台風一過。











PR
   Comment(3)    ▲ENTRY-TOP

Comment

こんにちは〜 - rudolf2006

ポンコツスクーターさま  こんにちは〜
お久しぶりです

小林秀雄、高校の頃には何も分からずに読んでいましたが、それ以降、まったく読んでいません、爆〜

出ましたね、ニルソンの「トゥーランドット」
イタリアものでは、コレルリとの方が相性が良かったように思うのですが〜
ニルソンさんの「自伝」で、テバルディがまったく譜面が読めなくて、驚いたと書いてありました、この録音でのことみたいです、ニルソンさんは絶対音感があったので…

この録音、音も良いですし、キャストも素晴らしいですよね、プッチーニがニルソンさんのために書いたオペラと言っても良いくらいのはまり役だと思います
ニルソンさんのイタリアものの中では、「トスカ」、「マクベス」と共に、傑作ですよね
ラインスドルフも、名指揮者の一人だと思います
ミ(`w´彡)
2014.09.29 Mon 11:18 URL [ Edit ]

やっと聴きました。 - 管理人:芳野達司

rudolf2006さん、こんにちは。毎度です。
小林秀雄、今読むと新鮮に感じるんです。半分近くはハッタリを言っているような気もしますが、口調(文章)の切れ味がいいんです。
ニルソンの「トゥーランドット」、神保町の「ディスク・ユニオン」にひっそりといたので確保、1ヶ月ほど寝かせてからおもむろに聴きました。
いやー、ニルソンの破壊力は予想通りです。難なく歌っていますねえ。
テバルディは楽譜が読めないのですか、面白いですね。現在ならばコンクールにも出られないですね。時代を感じます。
ニルソンはこのあと、プラデッリともこの曲を録音しているのですね。このたび初めて知りました。そちらも聴いてみたい。
それにしても、ラインスドルフの指揮がいい。録音ばかり多い便利屋のイメージがありましたが、オペラはいいのですね、見直しました。
2014.09.29 21:22

プッチーニ - neoros2019

クラシックを聴き始めてから半世紀経とうとしてるのに、イタリアオペラつまりプッチーニ、ヴェルディとはまったくかかわらない鑑賞生活を送り続けてきました
ずらずら記事に書いてきた通り、仕事の帰宅時のクルマの渋滞で2時間近く、車中に閉じ込められる日々が続く中、ワーグナーの楽劇
や手つかずだったR.シュトラウスの各作品を流しっぱなしにしておくのが、なかなか心地良いのでそのような鑑賞傾向に片向いています
クラシック専用ブログに上げたとおり、プッチーニはカラヤンで揃えるかといいかげんに考えてます
そこで芳野さんの記事のプッチーニ、R.シュトラウス欄をさかのぼって拝見しました
参考にさせてもらっています
2015.07.26 Sun 18:01 [ Edit ]

ご無沙汰しています。 - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、
プッチーニやヴェルディ、ワーグナーは一時期まとめて聴いたのですけれども、今年になってあまり聴いていません。ショルティのボックスはまだ残りがあり、聴きたいのだけれども長いので躊躇しているところです。
プッチーニの演奏がなにがいいのかは私にはよくわからないのですが、カラヤンのはいいのではないでしょうか。歌手も揃っているし、オーケストラも立派ですから。ヴェルディやワーグナーも同様かもしれませんね。あと、ショルティも気になります。

>そこで芳野さんの記事のプッチーニ、R.シュトラウス欄をさかのぼって拝見しました
>参考にさせてもらっています

恐れ入ります。ありがとうございます。
2015.07.26 21:56

誰も寝てはならぬ - neoros2019

いやいや
カラヤンのトゥーランドットをざっと聴きました。
クラシック音楽の醍醐味のひとつをまったく触らずに来た自分を恨めしく思っています。
大好きなマゼールの手腕をいかんなく発揮する素材であることは自明の理でしょう。
プッチーニのオペラは。
ヴェルディとプッチーニは芳野さん?のブログによるとマゼールはけっこう色んなオケで手掛けてるようですね。
記事に書いたとおり、フルコーラス、フルオーケストラの咆哮はマーラー、ベルリオーズ、ワーグナーと同様な音圧があります。
2015.10.18 Sun 21:16 [ Edit ]

うふふふふ。 - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、こんばんは。
マゼールの「トゥーランドット」は好きな演奏です。薄いヴェールがかかったような独特の雰囲気があります。マルトンに対するカレーラスはけっこうキツそうで、それがまた迫真感を生んでいるようです。
彼の指揮では「トスカ」もいいですね。こちらはニルソンとF=ディースカウが歌います。若きマゼールの溌剌とした指揮ぶりがすばらしい。
プッチーニのオーケストレーションは、先達からの影響を豊富に受けているせいか、華やかですよね。
ところでカラヤンの「トゥーランドット」はまだ未聴なのです。聴かなければ。
2015.10.19 20:20
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
4 5 6 7 8 9
11 12 13 14 15 16
18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新TB
カテゴリー