プッチーニ「トスカ」 カラス(トスカ)、ディ・ステファノ(カヴァラドッシ)、ゴッビ(スカルピア)、カラブレーゼ(アンジェロッティ) サーバタ指揮ミラノ・スカラ座「トスカ」初聴きはカラス/サーバタで。音楽の友社の「21世紀の名演奏」という本を見ると、カラス/プレートル、リッチャレッリ/カラヤン、ミラノフ/ラインスドルフ、テバルディ/プラデッリというところを抑えてダントツの1位だったので、ミーハーではあるが初めて購入するのだからまあ良かろうと思いこれにした。
筋書きは「ボエーム」よりもさらに直截でわかりやすい。
画家のカヴァラドッシは、政治犯のアンジェロッティを匿っている。警視総監のスカルピアはそれに感づいていて、さらにそれにかこつけ画家の恋人のトスカにちょっかいを出そうとしている。
カヴァラドッシはアンジェロッティの居場所を教えないため拷問にかけられ、それを口実にスカルピアはトスカに迫る。とうとうアンジェロッティの居場所がわかり、見つかった彼は自害する。それを聞いたトスカはスカルピアの要望を受け入れると言い、カヴァラドッシの偽装処刑をする念書を書かせた後、殺害する。
しかしカヴァラドッシは本当に処刑され、偽装と思い込んでいたトスカは彼の死に絶望して身を投げる。
主な登場人物が全員死んでしまうところが潔く、いかにも悲劇という感じがする。
全編甘い旋律に彩られていて飽きるところがないが、特に第2幕のトスカとスカルピアの迫真のやり取り、そして第3幕のカヴァラドッシが処刑される前後のあたりが聴きどころだと思う。
トスカがスカルピアに「カヴァラドッシを助けてやるから、オレとつきあえや」というようなことを言われて煩悶するあたり、彼女の苦痛がひしひしと伝わるのである。カラスは、最初に登場したときにあまりいい声ではないと思ったが、聴いているうちに場面ごとに巧妙に声の質を変えていることがわかった。1つのアリアの中でも微妙に変えていて、常に感情をむき出しに歌い上げている。特にカヴァラドッシへの愛の苦しみ、悲しみを歌いわけるところなんかは、まったく天衣無縫だ。
スカルピアのゴッビはいやらしい中年男を演じて余りない。カヴァラドッシのディ・ステファノはひたすら甘い声で正義漢を演じている。とても個性的な声だと思うし、時代を感じるなあ。
トスカニーニ去った後のイタリア・オペラ界の屋台骨だったサーバタの指揮は、テンペラメント豊かで聴き応えがある。スカラ座のオケは文句なし。このオペラ、舞台も観てみたいものである。無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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