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サーバタのプッチーニ「トスカ」

2007.02.10 - プッチーニ
カラス

プッチーニ「トスカ」 カラス(トスカ)、ディ・ステファノ(カヴァラドッシ)、ゴッビ(スカルピア)、カラブレーゼ(アンジェロッティ) サーバタ指揮ミラノ・スカラ座


「トスカ」初聴きはカラス/サーバタで。音楽の友社の「21世紀の名演奏」という本を見ると、カラス/プレートル、リッチャレッリ/カラヤン、ミラノフ/ラインスドルフ、テバルディ/プラデッリというところを抑えてダントツの1位だったので、ミーハーではあるが初めて購入するのだからまあ良かろうと思いこれにした。

筋書きは「ボエーム」よりもさらに直截でわかりやすい。

画家のカヴァラドッシは、政治犯のアンジェロッティを匿っている。警視総監のスカルピアはそれに感づいていて、さらにそれにかこつけ画家の恋人のトスカにちょっかいを出そうとしている。
カヴァラドッシはアンジェロッティの居場所を教えないため拷問にかけられ、それを口実にスカルピアはトスカに迫る。とうとうアンジェロッティの居場所がわかり、見つかった彼は自害する。それを聞いたトスカはスカルピアの要望を受け入れると言い、カヴァラドッシの偽装処刑をする念書を書かせた後、殺害する。
しかしカヴァラドッシは本当に処刑され、偽装と思い込んでいたトスカは彼の死に絶望して身を投げる。

主な登場人物が全員死んでしまうところが潔く、いかにも悲劇という感じがする。
全編甘い旋律に彩られていて飽きるところがないが、特に第2幕のトスカとスカルピアの迫真のやり取り、そして第3幕のカヴァラドッシが処刑される前後のあたりが聴きどころだと思う。
トスカがスカルピアに「カヴァラドッシを助けてやるから、オレとつきあえや」というようなことを言われて煩悶するあたり、彼女の苦痛がひしひしと伝わるのである。カラスは、最初に登場したときにあまりいい声ではないと思ったが、聴いているうちに場面ごとに巧妙に声の質を変えていることがわかった。1つのアリアの中でも微妙に変えていて、常に感情をむき出しに歌い上げている。特にカヴァラドッシへの愛の苦しみ、悲しみを歌いわけるところなんかは、まったく天衣無縫だ。
スカルピアのゴッビはいやらしい中年男を演じて余りない。カヴァラドッシのディ・ステファノはひたすら甘い声で正義漢を演じている。とても個性的な声だと思うし、時代を感じるなあ。
トスカニーニ去った後のイタリア・オペラ界の屋台骨だったサーバタの指揮は、テンペラメント豊かで聴き応えがある。スカラ座のオケは文句なし。このオペラ、舞台も観てみたいものである。





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Comment

無題 - bitoku

こんにちは。
この「トスカ」は名盤の誉が高いですね。でもディ・ステファノはあまり好きではありません。
カラスの「トスカ」は何種類か出てますよね。どれも音が悪いですけど。

>カラスは、最初に登場したときにあまりいい声ではないと思ったが、聴いているうちに場面ごとに巧妙に声の質を変えていることがわかった。

私も同感です。本当にカラスの芸は細かいので聴き込んで行く程味がありますね。

でもオペラを取り上げると話の筋書きを少しは説明しなければならないので大変ですね。吉田さんは巧く要約して説明しておられて感心致しました。
私が書いたら凄~く長い文章になってしましそうで取り上げる勇気がありません。(笑)
大好きなオペラなので色々なLDなどで見たりしましたが、一押しはテバルディが1961年に来日した時のDVDです。指揮者と歌手陣だけイタリアから来日してオケはN響です。

カラスの凄さを認めつつ、テバルディ贔屓の私が聴くCDだとやはり、テバルディの最高の音質の59年のデッカ盤になってしまいます。デル・モナコも流石の歌唱。スカルピアも良かった。

3幕それぞれに有名なアリア(「妙なる調和」「歌に生き、恋に生き」「星は光ぬ」)があるのも好きな理由です。

最近、ピアノばかり聴いているので吉田さんの影響でまたオペラを息抜きで少し聴いています。
昔、私の書いたブログの記事で取り上げているテバルディの「トスカ」のDVDの記事をトラックバックさせて頂きました。
お恥ずかしいのですがイタリア・オペラの記事はこれしか書いていないので。。。
では。
2007.02.10 Sat 19:20 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

TBありがとうございます。

「トスカ」、残酷なシーンが多いという理由もあって、今でも賛否両論の作品らしいですが、私はすっかりハマッてしまいました。
テバルディにするかカラスにするかちょっと迷いましたが、カラスをあまり聴いたことがなかったのでこれにしました。なんというか、表現の幅が広い歌手です、今更ですがびっくりしました。

>一押しはテバルディが1961年に来日した時のDVDです。

世評高いものですね。もちろん、まだ観ておりません。今回カラスの「トスカ」を聴いて、無性に舞台を見たくなりました。それがテバルディであれば、これは垂涎です。
この頃のNHKのイタリア・オペラシリーズは出演者の気合が入っていて、いいものが多いですね。シリーズのごく一部を聴いただけなのですが。
またデッカ盤のCD、すごいキャストですし録音も良さそうで…、買いたいリストが激増中、参りました(笑)。
2007.02.10 21:33

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、こんばんは。今回は王道の中の王道ですね!(私は偏屈にも「今聞きたいオペラ!」などという方針にしてしまったため、イタリアものが少なく、吉田さんのエントリーにてこの企画のバランスが取れている感がありますm(_ _)m)
さて、カラスですが、過日のシュヴァルツコップとならんで、私が非常に苦手としているソプラノです。(これゆえに、胸を張って「オペラが好きです」と言うことができない自分がいます。)
もちろん、表現力はまことすばらしいのですが、もう少しストレートな発声を好んでいるからかもしれません。
カラスの「トスカ」となると、このサバータ盤と後年のプレートル盤(同じくEMI)を聞きましたが、最近はマゼール(ニルソン、コレッリ、DFD)とシノーポリ(フレーニ、ドミンゴ、ラメイ)を好んでいます。DFDの狡猾さ、ラメイの美声が好きだからでしょう…
2007.02.10 Sat 23:05 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>今回は王道の中の王道ですね!
なにぶん初心者なので、とりあえず有名なところから聴いていこうかと。これでプッチーニが3つ続いたので、次回からは別の作曲家にしようかと思っています。結果的にそれらも王道といわれるものになるでしょうネ。

>吉田さんのエントリーにてこの企画のバランスが取れている感があります
いい感じです(笑)。パーセル、ヘンデル、スメタナというのは上級クラスではなかろうかと。オペラ史を考慮して聴くならば決して落とすことのできない演目ですね。

>最近はマゼール(ニルソン、コレッリ、DFD)とシノーポリ(フレーニ、ドミンゴ、ラメイ)を好んでいます。
両方とも豪華メンバーでかつ魅力的であります。ニルソンはプッチーニも多いですね、今回の調査(?)で知りました。意外。
2007.02.11 00:41

無題 - しじみ

こんばんは。
私の初トスカはゲオルギュー&アラーニャが夫婦共演したオペラ映画でした。
映画館で観たのですが、オペラ映画もなかなかいいなあと思いました。DVD出ていますので、ぜひご覧になってください。安上がりです。
トスカは仰るとおり、分かりやすいストーリーですよね。明日書く予定のトゥーランドットより、はるかに明快で、プッチーニオペラでは一番好きかもしれません。
2007.02.10 Sat 23:06 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>私の初トスカはゲオルギュー&アラーニャが夫婦共演したオペラ映画でした。
これ、やっぱり映像があると全然違いますよネ。明日載せる予定の記事は映像なのですが、これだと事前に台本を調べなくても話がわかるし、歌手の演技を見るとこれがまた一興なのですね。

>トスカは仰るとおり、分かりやすいストーリーですよね。
わかりやすくて音楽に集中できます。細かいところに矛盾はあるようですが、オペラにしては整然とした台本だと思いました。「トスカ」の舞台、いや映像でもいいから、見たいですねー!
2007.02.11 00:38

無題 - sweetbrier

こんばんは。
カラスのトスカはアリアのひとつも聴いたことがないのですが、昨日テレビ放映されたリサイタルを視聴しました。

> 最初に登場したときにあまりいい声ではないと思ったが、聴いているうちに場面ごとに巧妙に声の質を変えていることがわかった。1つのアリアの中でも微妙に変えていて

ここのところ、そのリサイタルでのパフォーマンスからも全く同じ感想を持ちました。声については、かなり調子の悪い時期の録音だったようなのですが、表現力で聴かせる歌手だったんでしょうか。感激しました。

あのそれで、昨夜吉田さんちのRSSを探してウロウロしていて気がついたのですが、サイドメニューに拙ブログの2月13日をリンクしてくださっていたんですね! すみません、気づくのが遅くて<(_ _)>。ありがとうございます。拙ブログのサイドメニューにも、吉田さんのブログをリンクさせていただいてよろしいでしょうか?
2007.02.16 Fri 22:23 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

カラスの素晴らしさを、遅まきながら最近ようやく知りました。
いまだに皆に慕われる理由が、少しですがわかりました。これからすこしづつ彼女の歌を聴きたいと思いました。
CDではいくつか聴いているのですが、実際の舞台(映像)は昔観たきりで最近は観ていません。これについても機会があれば観てゆきたいですね。

リンクの件ですが、勝手に登録しまして失礼いたしました。sweetbrierさんリンクして頂けたら光栄です。
2007.02.16 22:52

無題 - ダンベルドア

こんばんは
すでにこの盤について書いておられたのですね。
カラスの声を聞いて「ドラマティコ」の意味を実感しました。
カラス、ステファノ、ゴッビ、そしてデ・サバータとスカラ座全てが全盛期の一期一会の名盤という気がします。
2007.02.16 Fri 23:15 URL [ Edit ]

Re:ダンベルドアさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いやマコトにこの盤は素晴らしい。良い音楽を聴いているに加え、良いドラマ(というか演劇というか映画というか)を観ているような感触がありました。
カラスのほかのCDをまとめて聴きたくなります。
ステファノ、ゴッビ、サバータ、そしてスカラ座というメンバーも実に魅力的でありました。
2007.02.16 23:37
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