小林秀雄の対話集「直感を磨くもの」から、梅原龍三郎との対話「美術を語る」を読む。
この対話は1955年に行われた。小林はだいぶ年上である洋画界の巨匠に対してもやはり遠慮なく自分の意見を戦わせている。が、根本的な見方においてふたりは一致しているように読める。
ふたりはセザンヌとピカソを褒めているのに対し、シャガールとローランサンについては辛い評価をしている。
小林「画描きというのは、要するに色なんだから、文句なく色がきれいでなければ何を言い張っても駄目でしょう。色はきたないが新式だなぞというものはあるものじゃない」。
梅原「色に対する愛情がないな。ただ刺激的に塗りこくってみるだけで、愛情がないと思うな。このごろの画描きには」。
小林「ありませんな」。
これを単純に音楽に当てはめてみれば、音。音がきれいでなければ駄目。一理あるだろう。
パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏でブルックナーの交響曲5番を聴く。
これは、先週に聴いた
7番と同様に、とてつもない執念でもって磨き上げられたブルックナーだ。
ただ、7番と5番とでは同じブルックナーといっても多少スタイルが異なるから、印象は違ってくる。5番はブルックナーのシンフォニーの中でも6番と並んでゴツい音楽だ。現在なお名盤と云われるクナッパーツブッシュや朝比奈の演奏などは、それを隠すことなく陽の下に晒したものだと思う。
ヤルヴィはそれぞれの楽章の、最初の主題はやや遅め、2番目のテーマはいくぶん速めにテンポを設定しているような気がする。それにより、スピード感は表示時間以上に速く感じる。やはりスマートな演奏。音はすみずみまで洗練されている。終楽章のフーガは予定通り圧巻であり、残尿感なし。完成度は高い。
しかしながら、7番ほどにはうまくいっているとは思えない。もっと、やぼったい、険しいなにかが欲しいと思ってしまう。
というのは、自分のこの曲に対する偏見なのだろうが。
2009年4月、5月、フランクフルト、アルテ・オーパーでのライヴ録音。
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